きゅうげん

TRUE DETECTIVE/トゥルー・ディテクティブのきゅうげんのネタバレレビュー・内容・結末

4.3

このレビューはネタバレを含みます

猟奇殺人、政治の腐敗、宗教の欺瞞、旧家の暗部、ギャングの抗争、陰謀論にバッド・トリップ、カルト的因習やインモラルなセックス、ヒルビリー・ホラーからクトゥルフ神話まで!
この刑事ドラマ、面白すぎる!!!
時を超えて神出鬼没する謎の“芝刈り”……なんてめっちゃピンチョン感ある。

まぁ、真犯人(グループ)のカルト像がふんわりめとか、自分を刺したナイフが証拠というお約束(ご都合)展開とか、ラストの突飛な仮説は一笑に伏された一方で突飛なラスト真犯人説は現在の捜査方針の主流となってる非対称性とか、なにより匂わせてきた陰謀論要素があまり前景化されないオチとか、枝葉末節の完成度は惜しく、終盤の片付け方も性急な気がしなくはありません。

ただ、現在と過去とが錯綜し真相が揺らぐ感じは絶妙で、点と点が繋がる大局的な事件の流れから、相棒同士のパーソナルな問題まで綿密に影響しあって、とっても濃厚なドラマを繰り広げます。
厭世的で皮肉屋のヒッピー崩れみたいなマコノヒーと、良くも悪くもアメリカ的父権を体現する昔気質なハレルソンの、口喧嘩の絶えない凸凹コンビは最高(再会してからの方が息合ってるのもイイ)。

本作のテーマである「家族」は、犯人側の名門タトル家や禁忌的なチルドレス家、あるいはハートの家庭崩壊、そしてわけても父との関係や娘の喪失に終生苦悩するラストなど、作中さまざまに横たわってます。
そんなラスト自身がクライマックスで経験する、(ビアス、チェンバース、ラヴクラフト的にいうところの)「宇宙的衝撃」は、最後の独白も相俟って圧倒的ながらも本当に切ないです。

海外刑事ドラマといえば『NCIS』とか『CSI』とか『メンタリスト』しか観ないライト層なので、このヘビーなリミテッド・シリーズの衝撃はしばらく尾を引きそう……!
フクナガ監督の手腕を再確認できる傑作でした。