ファルコン

SUPERGIRL/スーパーガール<ファイナル・シーズン>のファルコンのネタバレレビュー・内容・結末

4.5

このレビューはネタバレを含みます

ファイナルシーズンなだけあって、とてもシリアス。1話1話の内容が充実していて見応えがあった。もちろん作品全体のトーンは明るいけど。
今シーズンでは、家父長制の問題、環境問題、黒人差別とそれに関わる貧困の問題、児童虐待の問題、里親・養子の問題、刑務所の所長や政治家など権力者の汚職問題、弱者を無視する社会システムの問題、トランスジェンダー差別の問題、メンタルヘルスの問題、ジャーナリズムの在り方など、スーパーガールたちはこれまで以上の困難に立ち向かわなければならなかった。スーパーガールとしてもカーラ・ダンバースとしても、やらなくちゃいけないことが山積みで対処のしようがなく、いつも焦っていて結果的に全部後手に回っている描写が多くて、見てる方も苦しかった。
特に人種やジェンダーによる差別の問題や地球環境の問題は終わりが見えないものだから、ただ敵を倒してハイ解決!とならないのが大変だよね。
ニクスリィのせいでカズニアとコルト・マルテーゼの和平交渉が中傷合戦になって、最終的に核ミサイル発射されちゃうの、なんかめっちゃ「今」っぽいな…って思った。
スーパーガールがファントムによってネガティブな感情に支配されていく様子は、見ていてつらかった。そこで再会したお父さんが「諦めちゃダメだ、お前は何だってできる。2人一緒なら大丈夫だ」って励ましてくれるシーンは泣いてしまった。
ブレイニーが怒りや悲しみ、無力感や後悔といった強い感情の整理の仕方を知っていくのとか、見ている側も学ぶことがあるよね。
「たった1人の大切な人」ではなく「世界中の人々」を優先するのがヒーローだけど、こういう決断が出来るようになるのはなかなか難しい…。
「人は自分の恐怖に向き合って、乗り越えることで成長する」、大事なことだ。
報道機関が「世間からの注目度」を指標に経営されていくと、ジャーナリズムの意義が失われるのも、今っぽい描写だったな。
カーラやニアの「誰でも過ちを犯す、今出来ることはそこから学んで前に進むこと」という言葉、その通りよね。
「大局を見ていると、身近で起きている問題に気づけないことがある」、私も心得ておきたい。
トランスジェンダー女性のヒーロー:ドリーマー/ニア・ナルと、その姉メイヴのエピソードは本当につらかった。自分が欲しがっていた夢の能力を妹ニアが受け継いでしまったから、自分の努力が報われなくてニアを妬む気持ちもわかるけど、「本当の女性じゃないのに!」とド直球の差別的な言葉を言い放って家を出て、姉妹なのに母の死を一緒に悲しめなかったうえに、ニアはもともと能力を欲しがってなかったからパワーの使い方や夢を解釈する方法を教えてくれる人がいないままになってしまったのが悲しい。メイヴ、ドリーマーになりたかった・なりたいという割に、大切な夢のトーテムを奪おうとして世界を危険に晒したりして、自分のことしか考えてなくて全然ヒーローの素質ないんだよな…。そんなメイヴに「恥を知りなさい。あなたはパワーに執着し、宇宙を危険にさらそうとした。なんて自分勝手なの?ドリーマーがそんなことすると思ってる?私はドリーマーにふさわしくない?本当の女性じゃない?どうだっていい、私はわかってるから。私はドリーマー。あなたは何者?」と厳しい言葉で非難するニアが本当にかっこよかった。
これまで清々しいほどの悪役だったレックス・ルーサーが、このファイナルシーズンという局面で「未来では1人の女性を一途に愛していた」という全く新しい側面が描かれて、とても面白かった。愛のなんたるか、女性との接し方のなんたるかを心得ているレックスにはびっくりしたけど(笑)
未来から来たレックスと今のニクスリィ、もしかしたら上手くいくか?と思ったけどやっぱりダメでしたね…。純真な子どもを傷つけようとする男性を、ニクスリィは許せないもんな。
アンドレアがウィリアムの名前を勝手に使ってレックス・ルーサーのゴシップ記事を出してしまったことで、ウィリアムが殺されたことは本当にショックだった。あんなに良い人だったのに。
ブレイニーが「未来に帰ってこい」と命を受けて、「僕には今、もうこの時代に恋人も仲間もいるのに、彼らを手放したくない!」と涙ながらに叫ぶの、つらすぎた…。
「たくさんの愛や悲しみを感じられて嬉しいよ、意味ある時間を過ごしてきた証拠だから。これからも君は僕と共にある、僕がどこにいようと」とか「僕は未来に戻るが、それがわかったからこそ残った時間をこうやって大切に過ごせる。夢で何を見ようとも、僕が君のそばにいるよ」とか「きっと君のことを夢に見る。君は僕にとって夢の女性だ。ニア・ナル、愛してるよ」とか「時空連続体?ビッグ・ブレイン?確かに心配だ、論理的に考えれば。でも構うもんか。ニア、愛してる。君以上に大切なものはない。僕は人々を守ることに人生を捧げてきたが、未来に戻るとそれが空虚に思えた。僕にとって一番大事なのは、君に尽くして生きることだ。未来の歴史はまだわからない。だからこそ未来だ」とか言うブレイニー、かっこよすぎて無理。
ニアとブレイニーのカップルは本当推せる、大好き( ; ; )
真実のトーテムの試練で「私にも、誰か親しい人がいてくれたら」と、本音を言うニクスリィに胸を打たれた。
第17話と第20話(最終話)、女性同士のカップルであるアレックスとケリーのプロポーズ&結婚式の描写を、じっくり時間をかけてやってくれたのがすごく嬉しかった。本当に感動して、涙が止まらなかった。同性のカップルが結婚したい気持ちって、男女のカップルが結婚したい気持ちと何も変わらないんだよなって改めて思ったし、そうやって人生を共に生きていきたい相手に出会えたって本当に素晴らしいこと。2人の養子になったエスメちゃん、本当に良い子でかわいかった…!
カーラが「私は、人々を救う対象として見ていた。彼らを救うのが私の使命で、地球のヒーローになるのが私の務めだと本気で思っていた。本当に目指すべきなのはヒーローになることではなく、パートナーになること。一人ひとり、みんながヒーローになれるよう鼓舞するのが自分のあるべき姿だ」と言って、6年続いてきたドラマの最終話に、ヒーローの在り方の前提を定義し直すのはすごい展開だと思った。
スーパーガール/カーラの「一人ひとり、自分の素晴らしさを認めることが悪を倒すほどのパワーになる。力を合わせればより良い世界を築ける」という言葉、単純だし陳腐かもしれないけどすごく刺さる。
最終話は、モン=エルもウィンもジェームズも、そしてキャットさんも再登場してくれたのが嬉しかった( ; ; )
特にウィンは、レギュラー扱いだったS3までの私の推しだから…。その後はゲスト扱いであまり出てこなくなっちゃって寂しかった。アレックスとケリーの結婚式で、カーラとウィンのデュエットが聴けて号泣してしまった。ウィンは、カーラが一番最初に正体を明かした人だもんね…。
世間に正体を明かす決心ができなくて「自分をさらけ出して、人と向き合うのが怖い」って言うカーラ。カーラのこの感情は、ヒーロー特有のものなんかじゃなくて人間誰しも思っていることで、本当に普遍的なものなんだよな…。
そして物語は、キャットコーメディアでキャット・グラントと正体を明かしたスーパーガール/カーラ・ダンバースが笑顔で対談する映像で幕を閉じる。正体を偽るのは、もう終わり。少しさみしいけれど、とても爽やかでスーパーガールにふさわしいエンディングだった。
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