ガンダムシリーズの生みの親である富野由悠季監督は、昔行われた雑誌のインタビュー(東日本大震災よりずっと前)で次のように答えていた。「反原発を掲げる方には、電気を使わない生活を送っていただきたい」と。
私もまったくの同意見。批判しつつ、その便利さを享受し続けているのは通らないと思う。とはいえ、私も原発がもたらす惨事を良しとしているわけではない。ただ、何かを授かったら、別の何かを諦めるのが人生だと思う。
今から30年近く前に起こった人類史上最大規模のメルトダウンを描く。当時、ただのアニメ好きの学生だった私はまるで関心を持たなかったが、福島原発事故以降、それでは済まされなくなった歴史的事実である。
非常に見応えがあったし、勉強になった。いくらか脚色が加えられているようだが、基本的には史実に基づいているという。それだけにリアリティーが凄まじい。特に、当時の一般人民が放射線について無知なのに驚愕した。
まるで、ホラーのようだ。事故を橋の上から興味深げに見物する原発の近くに住む住人たち。子供が笑いながらはしゃいでいるのだから。おそらくソ連政府は万が一の事態について、彼らに何も説明していなかったのだろうと思う
それでもこの事故は一定程度、うまく後処理された方なのかもしれない。主人公の推測を信じるとして、もし誤りに誤って最悪の状態に陥っていれば、確実に「ウクライナ戦争など起こらなかったかもしれない」のだから。
これはなんとも皮肉ではあるが。しかし彼ら科学者や処理作業に従事した人々の活躍によって、現在もウクライナとベラルーシという二つの国が存在し、ヨーロッパも放射線を気にせずに生活できるに状態になっている。
くり返しになるが、世界で唯一の被爆国であり、国内に原発事故を抱える日本人にとっても無関係なドラマでは決してない。エンタメとしてもよく出来ているので、ぜひとも観てほしい作品である。
[オリジナル音声+日本語字幕]2024/12/21-25 U-NEXT