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その街のこどものtetsuのレビュー・感想・評価

その街のこども(2010年製作のドラマ)
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※ドラマ版が追加されていたので、劇場版に投稿したものをこちらに転載しました。

1995年、1月17日。
あの日、阪神・淡路大震災が起こった。
ーーーーーーそれから15年。
神戸で生まれた二人の男女は、
数十年ぶりに帰郷、
偶然にも出会うことになる。
震災への想いと、
あれからずっと立ち止まったままだった気持ち、それぞれの人生を歩む彼らは新しい朝を迎えられるのか...?

この作品では、自分の見慣れた景色が、
ありのままの姿で写し取られていた。
通学途中の街並みだったり、
何度も目にしていたロッカー、
様々な風景が自分にとって身近なもので、それが映像作品として残されていることは、率直に言うと、不思議な感じだった。

また、シンサイミライノハナプロジェクトなど、ノンフィクションが織り混ぜられることで、ドキュメンタリーのように、そして、キレイに描こうと見栄をはってないところが良かった。

本編は森山未来演じる"勇治"と
佐藤江梨子演じる"美夏"が、
ひたすら歩いて会話をしているだけなのだが、その二人の掛け合いが微笑ましいため、意外と重たくなっていないのも良いところ。

偶然にも、このあと
今回、音楽を担当している大友さんが、
東日本大震災を描くことになる「あまちゃん」で、音楽担当になったことには、何かの縁を感じた。

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ここからは、
ぼくの個人的な感想。

23年前、
まだ、僕は生まれてもいなかった。
僕の兄も、まだ3才。
地震の日は、
まるで「ゴジラ」が家を揺らしているかのようだったと両親は語っていた。

神戸では、
小学校の頃から、
震災について学習する機会が多くある。
僕自身は、実際に体験をしたわけではないが、様々な人々の体験を聞くことで、その怖さを思い知って育った。

本作で取り上げられた
"阪神淡路大震災1.17のつどい"
も、そのような震災学習で参加したことがある。
これは毎年、
神戸の東遊園という場所で行われる震災の追悼行事で、震災が発生した5時46分から1分間、
様々な思いや感情を抱えた人達が一緒になって黙祷をするのだが、この空気感は行った者にしかわからないものがあるように感じた。

ところで、
数日前、
僕は地元の成人式に参加した。
成人式には、式典を支援するために集まった11人の新成人代表がいるのだが、今回は、彼らたっての希望で、
「しあわせ運べるように」(震災の復興を願って作られた合唱曲)を新成人全員で歌うことになった。

いざ、歌が始まると、
前にいる集団が大声で元気に歌っているので、
最初は違和感を感じたが、
歌っているうちに、少し思うことがあった。

これは、僕たち世代にとってのわがままかもかもしれないが、
僕たちの世代が、
震災の事を考えるたびに、
暗い気持ちでいるよりも、
震災のことを風化させないように、
前向きな気持ちで歌うことの方が、
亡くなった人たちにとっても、
大事なのではないか?

震災が恐ろしいものであり、
多くの物を奪ったのは、変えることのできない事実だ。
しかし、
だからこそ、今を生きられることに感謝したいし、一日一日を大切にする必要がある。
その責任が僕たちにはあるのだと思う。

あれから、23年。
僕は、実際に震災を経験した人間ではないけれど、
この作品を見て、
直接、地震を経験していない自分だからこそ、多くの命を奪った大災害を忘れてはいけないと思った。
それは、もちろん東日本大震災のことも。

いつくるのか分からない大震災。
だからこそ、
僕たちは、それが起きたときの備えや対応を考えるべきだし、
毎年、数日でも、そのことについて、誰かと話し合う機会を持つべきなのだとおもう。

これから先の未来、
僕たちが大人になっても、
これらの事実は子供たちへと語り継ぐべきだと、今作を観て改めて考えさせられた。

僕も"その街のこども"の一人として...。


今回もスコアうんぬんの作品ではないと思ったので、「ユナイテッド93」の時に続き、点数は遠慮させていただきます。

参考

しあわせ運べるように - Wikipedia
https://ja.m.wikipedia.org/wiki/%E3%81%97%E3%81%82%E3%82%8F%E3%81%9B%E9%81%8B%E3%81%B9%E3%82%8B%E3%82%88%E3%81%86%E3%81%AB

阪神淡路23年 祈りの朝迎える | 2018/1/17(水) 6:28 - Yahoo!ニュース
https://news.yahoo.co.jp/pickup/6268685
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