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竹内涼真の撮休のtetsuのレビュー・感想・評価

竹内涼真の撮休(2020年製作のドラマ)
4.5
『有村架純の撮休』が面白く、竹内涼真さんにも興味があったため、鑑賞。

[概要]

国民的若手俳優・竹内涼真さんの撮休を題材に、豪華監督陣が手がけたオムニバスドラマ。(24~26分×8話)


[感想]

相変わらず面白いシリーズの第2弾。「竹内涼真」という役者やパブリックイメージを活かした内容が、どれも興味深く、回によっては、近年の短編ドラマのベストといえる名作もあり、大満足だった。
また、前シリーズとは異なり、OPが各話で新撮になったことで、回によっては本編の内容を示唆した演出が施されているのも良かった。
『仮面ライダードライブ』を糧に受験に取り組んだり、友人が地元の映画撮影で本人と共演したことなどもあり、かなり、親近感が湧いている俳優さんなので、今後の活躍も応援していきたい。

[各話感想]

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第1話
『薫るスパイスカレー』

[ゲスト]
小池栄子、渋川清彦

[監督]
廣木隆一

[脚本]
首藤凜

[あらすじ]
カレーのスパイスを探しに、専門店にやって来た竹内涼真。そこで出会った店主の女性・薫に、自然と心を惹かれる彼だったが……。

[感想]
過去作で、主人公が「何かに憧れる」さまや、切実な片想いを一貫して描いてきた首藤凜さんらしい脚本が興味深い作品だった。
男性の煩悩を刺激する思わせぶりなセリフのおかしさはもちろん、竹内さんを「恋に不器用な冴えない優男」、小池さんをファム・ファタール(魔性の女)的に描いた部分が絶妙で、登場するだけで作品が面白くなってしまう名脇役・渋川清彦さんの思わぬ参戦も楽しかった。後半の1カット会話シーンやラストなど、婉曲表現で視聴者に「人物の背景」や「本音」を考えさせる脚本が素晴らしかった。

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第2話
『人生』

[ゲスト]
藤野涼子、大野いと、イジリー岡田

[監督]
内田英治

[脚本]
狗飼恭子

[あらすじ]
突如、やって来た妹のために、カレー作りの材料を買いに出た竹内涼真。
街で何度も声をかけられる彼だったが、正確に名前を呼ぶ人は誰一人おらず、へこんでしまい……。

[感想]
謎にカレー好き設定が継承されたことで、前シーズンとは違い、絶妙なリンクが見られた第2話。
「兄」と「可哀想な若手俳優」というイメージで描きだされた竹内涼真さんのハマり具合がハンパではなかった。

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第3話
『世界で一番めんどい奴ら』

[ゲスト]
佐野勇斗、松本穂香、田山涼成

[監督]
松本花奈

[脚本]
舘そらみ

[あらすじ]
弟から彼女を紹介された竹内涼真。
しかし、少し変わった彼女に彼は困惑することに……。

[感想]
役者のハマり具合が相変わらず、最高な回。
良い意味で肩の力が抜け、リラックスして演技に臨んでいるようにも感じる役者の空気感が気持ち良く、これは、竹内さんより、年下の監督・松本花奈さんがメガホンをとったからなのではと。
とりわけ、ネクスト有村架純ともいえる実力派若手女優・松本穂香さん(実際に事務所の後輩)の怪演が素晴らしく、『アストラル・アブノーマル鈴木さん』やお笑い芸人"ジャルジャル"との共演に続く、彼女の"陰"の魅力が爆発していた。
また、彼女の「歪んだ部分がありながらも憎めない」キャラクターは、『38歳バツイチ独身女がマッチングアプリをやってみた結果日記』(脚本・舘そらみ)の主人公・チアキにも通ずるものがあった。

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第4話
『シェアハウス』

[ゲスト]
佐津川愛美、藤原季節、好井まさお、小野莉奈

[監督]
廣木隆一

[脚本]
玉田真也

[あらすじ]
売れない地下アイドルに、劇団員、お笑い芸人やADと生活をしている竹内涼真。
ある人物が受けた占いの結果により、退去の危機に陥ってしまった彼の運命やいかに。


[感想]
『タイトル、拒絶』ねーさんに、『佐々木、イン、マイマイン』、玉田組の常連に『アルプススタンド……』の「しょーがない」少女、とインディーズ映画のファンであれば、アベンジャーズ並に豪華とも思えてしまう魅力的な役者陣が繰り広げる演技のアンサンブル。
いかにも、玉田さん(劇団作家出身)らしい脚本で、シンプルながらも、惹きつけられる「ワンシチュエーション会話劇」の形式が最高だった。『僕の好きな女の子』にも通ずる現実と虚構が曖昧になる意味深なラストも、個人的には、玉田脚本らしさが出ていて良かった。

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第5話
『老婆との休日』

[ゲスト]
富司純子

[監督]
内田英治

[脚本]
ぺヤンヌマキ

[あらすじ]
人気俳優からの転落を不安視する竹内涼真。
街である老婆と出会った彼は、思わぬ事態へと巻き込まれてしまい……。

[感想]
「若手俳優ゆえのノイローゼに陥ってしまった竹内涼真」という導入部分を2度(アバンタイトルと冒頭)にわたり、強調することで、ラストシーンの着地を華麗に成功させた実力派回。まさかの『ミザリー』的展開、そこから一捻り加えたクライマックスが心地よく、改めて考えれば、タイトルの元ネタは『ローマの休日』だったのか……と気づいたり。

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第6話
『竹内涼真と竹内涼真と』

[ゲスト]
松本まりか、山本浩司

[監督]
内田英治

[脚本]
竹村武司

[あらすじ]
竹内涼真には、本人しか知らないとある秘密がある。
なんと、彼は2人いて……。

[感想]
冒頭、竹内さんの家に『さらば大戦士トゥギャザーV』が流れているという事実に、衝撃しか受けないw第6話。
「内容まんま『ハンサムスーツ』やんけっ!」とかツッコみたいことはあるものの、総じて、楽しかった。
なんといっても、後半の「とある展開」の配慮具合は絶妙で、一歩、間違えれば「容姿差別」にも繋がりそうな要素を、出来る限り、人を傷つけずに実現しているところは、『ハンサムスーツ』の何十倍も好感が持てた。まあ、松本まりかさんは、安定の色っぽさで、予想を上回る魅力があった。

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第7話
『鍵』

[ゲスト]
岡部たかし

[監督]
内田英治

[脚本]
ふじきみつ彦

[あらすじ]
竹内涼真の家に、しつこくやって来る郵便配達員。
不気味な距離感で接してくる怪しい彼の本当の目的とは……?

[感想]

近年見た短編ドラマの中では、間違いなくベストと言える一本。
コメディとして楽しませた後にたどり着く意外なラストの秀逸さと、演者の背景を活かした物語が良かった。
とりわけ、「本編→劇中劇→役者陣の実際の経歴」と3層の文脈が見事に重なる構成は秀逸で、劇中に登場する「印象的な動物」も含め、「脇役」や「演じること」を考えさせる脚本が素晴らしかった。

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第8話
『同級生』

[ゲスト]
森川葵、吉村界人

[監督]
松本花奈

[脚本]
松本哲也

[あらすじ]
高校時代の同級生と野外BBQをすることになった竹内涼真。
そこには、かつて思いを寄せていた同級生・美保がおり……。

[感想]
集団の中心として物事を進めようとする、いわゆる俺様キャラの竹内涼真が印象的に描かれた回。
映像作りの見本ともいえるほどに丁寧に張られた「視覚的伏線」の数々が特徴的だった。
勘の鋭い人であれば、おおよその展開は予想がついてしまうかもしれないが、そんな受け手への親切心は、むしろ心地が良かったとも。笛ラムネ、老夫婦、誕生日といった諸要素も上手く組み込まれ、ノスタルジックな後味があった。

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