テリーマザーファッカー虎

呪怨:呪いの家のテリーマザーファッカー虎のレビュー・感想・評価

呪怨:呪いの家(2020年製作のドラマ)
4.5
Jホラーとしても三宅唱監督としてネクストレベルに達した1本!

まず劇場版1作目以降の『呪怨』のようなお化け屋敷的恐怖を期待している人からしたら肩透かしかもしれません。というのもビックリ箱的恐怖表現は今回薄め。
じゃあ何がこんなにも恐いのかというとひたすら"得たいの知れない厭な何か"を描いているからだと思いました。これってやりようによっては「なんじゃそりゃ」という感想にもなってもおかしくない作りなのですが、本作は僕らが知っている80年代後半から90年代に起きた非常に陰惨で痛々しい実際に起きた事件が背景にある。そのことによって作品内で起きるこれまた陰惨な事件を1本の線で繋げようとしてくるわけです。それが本当厭な演出で終わりのない恐怖を描いていると思いました。

散見する幽霊よりも人間が怖いという本作への評価は完全に間違っていて、そういうものを超越した禍々しい理屈じゃない"何か"が一番怖いのだと。

なので本作はJホラーというよりもノワールホラーという新しいジャンルに突入しているようにも感じました。
本作で本当に酷い目に合うヒロインの里々佳の佇まいも相まってノワール×ホラー的な流れでは石井隆作品を彷彿とさせました。特に『ヌードの夜 愛は惜しみなく』はテイストとしてはかなり近い。

全くホラー畑ではない三宅唱監督の演出力も素晴らしく、鏡を象徴的に使用したカットやホラー映画ではかなり新鮮なディスコを舞台とした心霊描写、直接的なビックリ描写を極限まで抑えジリジリと迫っていく"何か"を丁寧に描いていました。

『イットフォロワーズ』や『ヘレディタリー』『死霊館』などの近年の世界的なホラー潮流にもしっかり呼応しつつも、日本的な陰惨でジメジメとしたおどろおどろしい作品を成立させたのは本当にビックリしました。