「琥珀」は、2017年の2時間のTVドラマ。60歳で定年間近の警察官である西田敏行が、同年齢の過去を背負った喫茶店のマスター寺尾聡と、その常連客の鈴木京香と出会い話は展開していく。西田と寺尾は同年齢で1947年生まれであるので、作品公開時は70歳で、60歳の設定よりは老けた印象。スズキは1968年生まれなので、当時49歳だが、大人の演技で西田と寺尾と絶妙のケミストリー。
この三人は、それぞれに辛い過去を持ち、それぞれが、過去を吐露をしていくことで、三人に絆が芽生えていく。人生を重ねた視聴者であれば、多くの人が、本作の登場人物のように辛い過去を抱えているものである。そんな時に、共感してもらえる相手に、過去を話すことで、ある種の救いのようなものが得られることになる本作の三人の心情は、視聴者にも、その場で、彼らと語りあうかのような共感を呼ぶ。
富山県の魚津は、ホタルイカと蜃気楼で有名であるが、本作にはホタルイカは前半に、蜃気楼は最終盤に登場する。ドラマ撮影時に、極めて稀である蜃気楼は実際に出現したとのことであるが、ドラマの中の奇跡のような登場人物たちの出会いと関係を思わせるような印象的なシーンとなっている。
本作は、西田敏行の追悼番組として2024年に再放送された。本作で西田は、外見はさえない初老の男という設定であるが、辛い人生を歩んだ人間ならではの他者への深い共感・同情が随所ににじみ出る演技。外見の大人の魅力と渋さをみせる寺尾に対し、内面からの高い人間性がみられる西田が実にカッコいい。