回想シーンでご飯3杯いける

アウトフィットの回想シーンでご飯3杯いけるのレビュー・感想・評価

アウトフィット(2022年製作の映画)
4.0
最近はもはや「映画は劇場で観るに限る」とはうかつに言えない状況になっている。その最たる理由が、本作のような良質な海外映画が上映されない事。一方で、Netflixのような海外発の配信サービスを通じて日本初公開となる時に妙な邦題が付かず、こうして作品本来の持ち味に触れる機会も増えてきた。

劇場だけでは必ずしも良い映画に出会えないという事。それは例えば、1980年代にタワーレコードが日本で出店し、所謂国内盤だけを売っているレコード屋では出会えない、海外の音楽に触れる機会が出来た当時を思い起こさせる。

タイトルの「アウトフィット」は、衣装一式という本来の意味だけでなく、マフィアのような組織を指す隠語でもあるようだ。本作の主人公はオーダーメイドの紳士服を作る裁断師。彼が経営する店を舞台に、得意客であるマフィアのトラブルに巻き込まれそうになる様子を、ワン・シチュエーションの会話劇として描いている。

主な登場人物は6人。前半は物語の筋道が見えない会話が続くのだが、「キングスマン」に出てくるような店がお洒落で、裁断の手裁きを見ているだけでも楽しいので、自然と作品世界に入り込める。

中盤で起こるとある事件をきっかけに、話は一気に緊迫。そこからは、主人公の頭の回転の速さによって、状況が二転三転。夢中になって見入ってしまった。約100分で無駄なくまとめられているのも良い。