回想シーンでご飯3杯いける

赤い闇 スターリンの冷たい大地での回想シーンでご飯3杯いけるのレビュー・感想・評価

3.5
前半と後半で全然雰囲気が違う。

原題とは全く違う邦題が付いてしまったので、スターリンによる人口飢饉をメインテーマにした映画にも見えるけど、その事実を世界で初めて報道したイギリス人記者ガレス・ジョーンズの名前を原題としている事からも分かる通り、これは報道の自由と知る権利の大切さを訴える作品なのだと思う。

冒頭はヒトラーやスターリンの台頭を批判するジョーンズに対して、新聞社の幹部達が正常性バイアスの典型と言えそうな冷笑を浴びせるシーンから始まる。

ソビエト連邦で何が起きているのか?を暴かなければ、世界に再び危機が訪れる。そんな使命感からジョーンズは個人としてソ連内のウクライナ地区に潜入する。そこからは皆さんがレビューで書かれている通り、子供達まで犠牲になる貧困と飢饉の現実が、強烈に描かれる。

このスクープを取り上げたのが、海外のメディアであった事が本作の最も観るべきポイントなのかもしれない。韓国映画「タクシー運転手」でも描かれていたが、最も伝えなければならない危機は、政治的な圧力や正常性バイアスによって、国内ではもみ消される事もしばしばだ。

近年、日本で起こった不祥事が海外のメディアによって告発されるケースが何度か見られた。それは日本の報道が機能不全を起こし、知る権利が蔑ろにされているという事。タイトルの「赤い闇」や「スターリン」を見て遠い国の話と片付けてはいけないのだと思う。