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ドライビング・バニーの旅するランナーのレビュー・感想・評価

ドライビング・バニー(2021年製作の映画)
3.8
【ひねりの効いた訳・厄・役】

この邦題とフライヤーを見て、てっきり「テルマ&ルイーズ」的な、女性ふたりのドライブ・ロードムービーだと思う人は多いでしょう。
僕もその一人でした。
しかし、その予測は全く裏切られます。

これはいわゆる邦題問題ではないかと思って、改めて「drive」の意味を調べてみました。
すると、他動詞として用いるとき、
①「(車・電車など)を運転する」
②「(人)を車に乗せていく」
③「…を追い立てる、追い払う、(人などを悪い状態に)追いやる、至らせる、(人などを極端な行動に)走らせる、行わせる」
④「(動力が)(機械などを)動かす」
などの意味があることが分かります。

もうお気づきでしょう。
「ドライビング・バニー」とは、③の意味を用いた、ひねりの効いた高度な邦題なのです。

それでは、主人公バニーは、何に追い立てられ、どのような極端な行動に走らされるのでしょうか?
ここで驚くのが、この映画の舞台は、ニュージーランドのオークランドなのです。
僕の浅はかな知識からすると、穏やかな何の問題もない住み心地の良い国のはずです。
ところが、この国にも、貧困問題、移民問題、住宅不足問題などがあることが分かります。
問題がグローバライズしているのか、グローバライズされたから問題が世界中に拡がっているのか知りませんが、この国にも同じように苦しむ人たちがいるのです。
そんな問題を抱えたバニーは、ひねりの効いた災厄へと突っ走ります。
厄介な話です。
とっても悲しい「ハッピー・バースデー・トゥー・ユー」です。

そして、冒頭で言及したテルマ&ルイーズになるはずだった、二人の女優さん。
エシー・デイヴィス&トーマシン・マッケンジー。
エシーさんは「ニトラム」の金持ちおばさん。
トーマシンちゃんは「ジョジョ・ラビット」「オールド」「ラストナイト・イン・ソーホー」の美少女。
でも、驚くほど、雰囲気が違います。
ここに女優魂の凄さを見ました。
このひねりの効いた役柄は見ものですよ。