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百花のパピコのレビュー・感想・評価

百花(2022年製作の映画)
4.1
妻の出産を控える主人公。
子供の時のある事件を機に主人公と母との関係性は気まずいままだった。
ある日母は認知症を発症する。
介抱する中で生じる気持ちの変化。
忘れていく母と忘れられない主人公。
忘れていく母と思い出す主人公。
家族と記憶をテーマにした物語。

記憶は消えていくもの。その儚さの美しさ。
ずっと記憶が蓄積されるAIにはない人間の愛おしさ。
忘れていくから大事な記憶。

親と子の思い出。
大事な子どもとの大切な思い出を忘れずに鮮明に覚えている母。
ある事件を機に母と距離を置き、思い出に蓋をした主人公。

主人公が母との記憶を思い出したシーンで涙が溢れた。
確かに自分の親も自分が子供のときに好きだったものや本当にくだらないエピソードも覚えていて、何度も何度も嬉しそうに話してくれる。
どこにでもあるようなありふれた記憶だけど、親子だけの大切な記憶。愛情を感じる。

親も普通の人間ということも何度も描かれていた。
完璧な大人のように子供の時は見えていたが、悩みながら懸命に生きている普通の人間。
恋心に動いてしまっても、妊娠を嫌がっても、親としての自信を持てなくても普通のこと。
悩みながら育ててくれた両親のこと思うと胸が熱くなるな。

認知症の症状について、映画を観ている人も体感できる作りになっている。
忘れていく怖さ、いつかは自分も覚悟しないといけないと考えると怖い。

ワンシーンワンカットやピントがぼやけた演出や、何も語らない後ろ姿。
ピアノの音色、半分の花火、ビスケット、大量の卵、無機質なAIアーティスト。
ストーリー外の映画作りのこだわりも好きでした。
静かで退屈に感じる人も多いと思いますけど、響く人には記憶に残る映画体験になると思います。

菅田将暉が親の役する世代になってきたか…
岡山天音はいつもの無礼な若者笑
河合さんは河合さんである必要なかったな笑
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