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ピンク・クラウドのkonomoのレビュー・感想・評価

ピンク・クラウド(2021年製作の映画)
3.7
世界中が触れると10秒で死に至る謎のピンク色の雲に覆われ、外に出られなくなってしまう人類。とはいえ大がかりなSFではなく、たまたま一夜を共にし、長い間フラットに閉じ込められることになってしまう一組の男女の視点のみで描かれる「ロックダウン映画」。

一見タイムリーなのだが、そもそもはパンデミック前に企画、撮影されていた作品。監督の心にあったのはブニュエルの『皆殺しの天使』(何故かパーティ会場から出られなくなってしまったブルジョア達が右往左往グダグダになる不条理もの>面白い)らしいので、とある制限下で人はどうなるのか、という映画だったのだろう。
また、ピンク色の雲は抑圧の象徴でもあり、仕事をし、子供を希望せずに自由に生きてきた女性が、この状況により古くから女性に押し付けられてきた役割を選択せざるを得なくなる…というフェミニズム視点でも読めるらしい(確かに女性を外に出さない習慣のある国などもありますよな)。

とはいえ、今の我々以上に「ロックダウンを強いられる人々」にがっつり共感して鑑賞できる世代はない訳で、それはそれで特権だなと思う。
後世、現実のパンデミックが薄れてきた時に、また別の評価がされるのかもしれない。

劇中の雲は全く引かずに何年も何年も経ち、その間子供は大きくなり、雲への意識も世代によって違ってきたりする。
さあ現実世界は一体どうなるんだろう?とぞわぞわした(このぞわぞわも私たちの特権ということになる)。

急に雲が湧いたので、たまたまその時いた場所に留まらざるを得なかったというのが面白くて(職場にずっと閉じ込められた人もいるのだろうし、だからインフラもテレビも止まらなかったのかなとか)、別のシチュエーションだとどうなるのか色々妄想もできて楽しい。
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