BATI

エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンスのBATIのレビュー・感想・評価

4.8
思ってたよりずっとよかった。これ「ネバー・エンディング・ストーリー」なんですね。勝利条件は「可能性を捨てないこと」。常に行動している、場面が転移していく事に意味がある。全ての音(音階)は常に鳴っている。そうか、「全ての音(音階)は常に絶え間なく鳴っている。」だからこのタイトルなのか。世界はカオスというクラスター。混沌の中にあるからこそ可能性は無限。虚無は優しく感じるかもしれないが、全ての音に耳を傾けろ。人生とは全てのそれが物語。自分の物語を諦めるなと私は受け取った。真摯で誠実な物語だった。家族愛というより、個々のコントロール出来ない他者である人間とやっていこうという話なんだと思う。あとは、「自我と向き合い続ければ、虚無を欲しがるぞ」っていうことでもあるんじゃないですかね。私には心当たりがあるからそう感じる。

序盤のカメラワークに演出、シャマランっぽかった。この時点で雑な映画ではないことが分かる。アクションパートの「キャプテン・アメリカ /ウィンター・ソルジャー」、「キャプテン・アメリカ /シビル・ウォー」のような戦闘構成のカチッとしたところ、それでいて舞踏できるである、そしてへたばっている大人が闘うからクールネスではなくおかしみを携えているのは丁寧だと思った。「フリー・ガイ」と方向性は同じだけどメソッドは違う。

「アメリカン・ユートピア」へのリプライのような映画ですね。だからデヴィッド・バーンの唄が出てくるのも納得。あtp、私はドビュッシーの「月の光」が大好きなんですよね。劇内のスコアがこれのモチーフみたいなメロディだなぁと思いながら聴いて(観て)いて、それで実際にあのシーンで流れたもんだから、「答え」は常に世界の中で流れている旋律なのだと語りかけているような気がしたんだよ。ホント、「その音は常に世界で鳴っている」なんだよ、エブエブ。
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