トッシー

エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンスのトッシーのネタバレレビュー・内容・結末

4.0

このレビューはネタバレを含みます

A24だし、
『スイス・アーミー・マン』の監督だし
マルチバースだと言うので…

アンソニー & ジョーの
ルッソ兄弟が製作を
やってると言えど

もっと意味不明で
難解な映画を
勝手に予想してました。

ところがどっこい!

メチャクチャ分かり易くて
ストレートな映画やんか!

確かにマルチバース初めての方は
序盤で迷子になるかもしれないけど
こちとらMCUで鍛えられてるからね。

まったく迷わなかったぜ!

そして、なにより…!

この映画が伝えたいメッセージの、
何と、素直で分かり易いことか!

「人に親切(寛容)でいよう」
「家族を愛そう」
「今ある幸せをしっかり見よう」
「カッコつけてないで
愛してんなら
愛してるってちゃんと言え!」

そんな超絶ストレートなメッセージ。

…もはや、ただの道徳じゃないか!

もしくは、少年漫画のノリ。

藤田和日郎ばっかり
引き合いに出してあれだけど
ちょっと『からくりサーカス』の
加藤鳴海を思い出しましたよ。

「おとなしく、かっこつけて
あきらめんな!
あがいてあがいてだめだったら、
そん時ゃ…
にっこり、笑うしかねえけどよ。」

…って鳴海兄ちゃんも
言うとりましたですわ…



カッコ悪くとも
色々塩梅が良くなくても

ここぞと言う時には
何もかも気にせずに
自分の気持ちを
しっかりと伝える!

互いに理解しあったり
他の誰かに寛容になるためには
相手の話を聞く事と同じように
そう言う部分も
結構重要なんじゃないかなあ…

…とか思う今日この頃ですよ。

だから最後のエヴリンの
行動にはグッときましたよね。
目頭が熱くなった!

…それとやっぱり
ミシェル・ヨー演じる
エヴリンの設定が好きですね。

自らもマイノリティでありながら
家族を支える大黒柱として
新しい価値観と古い価値観、
愛情と確定申告の狭間で
何かと苦悩する様に
感情移入しましたね。

社会全体で見れば
マイノリティなんだけど
「家族と我がコインランドリー」って
コミュニティの中では
エヴリン、体制側で
マジョリティ側なんよね。

だから、
古い体制をぶっ壊す
映画ではなくて
迫り来るニューウェーブを
何とか一生懸命受け止める映画
…でもあったと思います。

世の中には
そう言う立場の人の方が
まだまだ多そうですから。

感情移入して、共感する人も
多かったんではないかな?



…まあ、確かに余白は全然ない。

観賞後にあれこれ考えたり
新しい何かに気付く!
…なんてこともなかった。

面白いけど
言うてること、
全部知ってますわ…

道徳の授業とか
『からくりサーカス』とかで
習いましたわ…

…って感じなんですよ。

しかも、その言いたいこと全部、
登場人物の台詞で
まんま表現してしまってる感もある。

MCUとかスター・ウォーズとかの
ハイパーエンタメ映画でも
ここまで台詞で言っちゃう事は
まあ、ないですよ。

だからこれ、映画としては
絶妙にカッコ悪いと
個人的には思うんですよね。

…正直、面食らった。

アカデミー賞を席巻したのも
それはちょっと違うんちゃうの!?
…と思ったりもした。

けど、かっこつけないで
しっかり伝える事が
この映画のメッセージなんだとしたら

これはこれで良いんだよなあ…

と言うか、むしろ
こうでないと
あかんかったんやろな。

…そう言えば
藤田和日郎もだいたい台詞で
言っちゃいますよ。

加藤鳴海なんか
もう、バンバン言っちゃう。

熱くてメチャクチャ
カッコ良いんだけど
余白ないんよね、あいつ………
(故に名言 製造機なんやけどね。)

そして、この感じこそが、
今の世間が求めてるもの
…なんかもね。

「考える余白」とか
「問題提起」よりも

「みんな!
こうするべきだぜ!」…って

はっきりくっきり
誰かに言ってほしい人が
多いんじゃないかな?

アカデミー賞をあれだけ獲ったのも
そう考えると納得できるんですよね。

だから…

世界は今、ある意味
加藤鳴海を求めているんですよ…!

熱くてカッコ良くて
心に響きまくる名言を

例え当たり前の事であっても
ちょっと恥ずかしくても

はっきり言い切ってくれる。

そんな「鳴海兄ちゃん的 何か」を
みんなが求めているんやでえ…

だからもう、僕にとっては
『からくりサーカス』が
アカデミー賞を
獲ったようなもんなんですよね。

カンフーやったし
何か形意拳っぽかったからね!



とにかく、
アカデミー賞を7部門も
受賞したって言う
現実世界の事実も含めて
とても興味深く
楽しめた作品でしたね!



最後になりますが
ミシェル・ヨーは勿論のこと
キー・ホイ・クァン
ジェイミー・リー・カーティスなど
俳優陣はみんな良かったですね。

中でも、最凶かつ最愛の娘
ジョイことジョブ・トゥパキを演じた
ステファニー・スーが
メチャクチャ好きでした。

この物語における解決すべき問題を
一身に背負うような難しい役柄でしたが

青春を拗らせて
「謎のベーグル」と言う
明後日の方向へ達観した
ジョブ・トゥパキの
フワフワした感じと
あの表情がたまらなく良かった。

今後が楽しみな俳優さんです!

2023-10
トッシー

トッシー