スティーブ

エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンスのスティーブのレビュー・感想・評価

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別宇宙の自分とリンクして特技を吸収し、宇宙そのものを崩壊させようとする敵と戦うカンフーアクションムービー。

わりと独特な画作りと展開も相まって、ストーリーが混沌方面に踏み出しそうになるぎりぎりを踏みとどまっていく、あらゆる意味でなかなかスリリングな物語体験だった。監督がインタビューで、湯浅正明や今敏にインスパイアされた、と語っているそうだけど、なるほどなあ、と思わされた次第。正直予想の斜め二段上(あるいは下)というか、だいぶトンチキな映画なのだけど、人にはあらゆる可能性があり、けれど最終的にそれらが行き着く先はやはり死であり、終わりでしかない。だからこそ、自分の宇宙、自分の世界を愛し、最後の最後まで生きてゆけ、というメッセージ(と思う)を嫌味なく語ってくるラストなんて結構感動的で、「あれ? 俺、なんでこんな映画で泣かされてるんだ?」という気持ちになったりもして。実際感動してしまったからには、やはりこの映画にノックアウトさせられたのだろう。