あるバナナ

すずめの戸締まりのあるバナナのレビュー・感想・評価

すずめの戸締まり(2022年製作の映画)
3.1
戸締まりとは出かける時にするもの。
また今作で描かれる「戸締まり」とは、その土地の過去を清算すること。
つまり、「すずめの戸締まり」とは、すずめが過去を清算して旅立つことだろう。

過去とはつまり、震災の記憶・親との思い出。
過去を戸締まり、家を出ることで、すずめは自立し、前へ進んでいく。

そのきっかけはイケメンとの出会い。
イケメンへの恋心、イケメンを救いたいと思う気持ちがきっかけとなった行動が、結果的に自分の過去と向き合うことへとつながっていく。
人生とは得てしてそんなものなのかもしれない。

分かりやすいシナリオだと思う。
すずめもいい子だから作品として見やすい。

ただ、あまり満足感は高くなかった。
理由は3つある。
①背景美術に、期待してた新海誠っぽさがなかった。
②地震の扱い方が自分の好みじゃない。
③主人公たちの行動に興味が持てない。

①背景美術について
単純に劣化してない?? あの息を飲むような、切なさとか懐かしさとか、圧倒的な美しさとかを感じる空・海・森・街の風景はどこへ行ってしまったのか。光の表現で、リアリティと幻想感を同時に味わわせてくれた背景はどこへ行ってしまったのか。
今作でも作画ですごい!と思ったシーンはあった。すずめの表情を写すシーンだったと思う。
けど、重要なシーンで描かれる背景、特に終盤の常世の世界の空の星々なんかが、安っぽいCGが回転してるだけに見えて非常に残念だった。
個人的に背景美術の美しさは、新海誠の作家性の大きな要素の一つだと思ってるから、それが感じられなかったのが悲しい。

②地震の扱い
311を描くこと自体は覚悟を持って臨んでらっしゃると思うのでいいと思います。
好みじゃないのは、地震に原因を作り、それを人為的に止められるものにしたこと。

自然現象って、圧倒的に理不尽なものだと思うんですよね。突然来るし、日常を破壊するし、人が死ぬし、何よりも自分の行動との因果関係がない。悪人にも善人にも等しく災害は訪れる。
それは、震災を経験した人にとって非常にしんどいことだと思ってます。
誰かのせいで災害が起こったのなら、その人に責任を追及できる。何かのせいにできるってことは、健全ではないけれど、やりきれなさ




以下雑記
そういえばミュージカル映画感はかなり薄れてましたね。
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