日比谷の駅広告に惹かれて鑑賞。
役所広司を味わう映画。
彼の演技を見られるだけで価値がある。
ほとんど喋らないのに、「平山」を味わいのある愛すべき男に見せる演技と演出が素晴らしい。
(しかし、ほとんど喋らないので、自分はただ平山を理解しているような気になっているだけかもしれない点には注意したい。)
ほとんど変化がない毎日の映像が続くため、「俺は何を見せられているのだろう……」という退屈感が映画全体を包む。
ストーリーにフックがない。途中で出てくる気になるポイントもすぐに回収されたり、映画全体の大目的にはなりえないものだったりで、続きが気にならない。
しかし、その中で描かれる平山の姿は美しかった。
彼の会社の後輩は仕事に意義を感じておらず、妹からは社会的弱者として認識されている(と本人は思っている)。そんな、恵まれているとは言えない男が、それでも毎日を非常に誠実に生きている。誰にでもできることではない。
「何を変わらないなんて、そんなバカなことはない!」という平山のセリフは、彼の祈りなのだろう。
心に響いた。
ただ、もう少しシナリオにフックがあれば尚良かった。
【その他】
・「何も分からないまま終わっちゃうんだなあ。」、という三浦友和のセリフが非常に刺さり、同時に怖くなった。
多分自分もそう思いながら死ぬんだろうなあ。
・田中泯の存在はよく分からなかった。彼はホームレスであり、社会的地位が低いと言える。
しかし、公式サイト曰く、そんな彼に平山は敬意を抱いているらしい。なぜなのか。 アーニャわかんない。