このレビューはネタバレを含みます
とてもフック（要素）の多い
映画だなあと思いましたよ…
ガールがボーイとミーツして
古来より続く伝奇ロマン的
戸締まりアクションで
怪異と対峙していく
爽やかロードームービーで
可愛らしい猫とか椅子とかの
マスコットキャラと
ワチャワチャしたり
見た目は激烈チャラいのに
中身は凄くナイスガイで懐メロ好きな
神木隆之介ボイスの親友に
励まされながら
大人は分かってくれないと
子供は何考えてるか分からない！
…って言う母娘の問題も乗り越えて
愛する人と日本を救うために
時空を超えて奮闘する！
さらにまだここに、
東日本大震災も
乗っかってきますからね。
もう、てんこもり
二郎系ラーメンもびっくりの
スーパーボリューム
ハイパーカロリー。
これだけフックがあれば、
きっとみんな、どっか1個
引っ掛かるんではないかな…
しかし、これだけのボリュームを
121分の上映時間にまとめあげた
新海誠監督の演出手腕には
ひたすら脱帽ですよ。
的確な取捨選択とかも
あったんでしょうな…
次から次への圧倒的テンポで
まったく飽きなかったもん…
イケメンにホイホイついていった
序盤のすずめへの違和感も
ラストのタイムリープで
しっかり解消しますしね。
本当に良くできてるんですよ…
…けど、ちょっと
上手くできすぎてる
気もするんですよね。
ひねくれものの
うがった見方に
なっちゃうんですけど
計算されつくした超絶技巧！
…みたいな印象の映画
作家自身からにじみ出る
本性みたいなものが
溢れでた「絵画」ではなくて
技術の粋を結集して
造り上げられた「工芸品」
…みたいな印象を受けました。
それ、どっちも凄いし
どっちも観てて楽しいんだけど
どっちかと言えば
僕は作家性の溢れ出た
「絵画」の方が好きですね…
だから、そういう意味では
新海誠 直近の3作品では
『天気の子』が1番好きなんですよ。
あれ、ちょっと
変な映画でしたけどね。
…色んな方の
レビューや考察を見ていると
新海誠監督は
『君の名は』以降、
かなりメジャーに振り切ったとか…
そっから作風が結構変わった。
…とか聞くんですよね。
昔の作品は
かなり切ないとか、
ある意味、かなり気持ち悪いとか、
そんな感想も聞くのですよ。
『君の名は』以前の映画
僕は観てないから
実際は分からないんですけどね。
でも実際に
『君の名は』以降
大ヒットを連発して
一気に国民的メジャー監督に
なりましたからね。
やっぱり、そうなんかなあ…
「とにかく売れないと
どうにもならん！」
…と、その本性を封印して
メジャー展開への
変換を図ったんでしょうか？
まあね、
売れるために計算して
やりたい事を我慢して
メジャーを狙って…
そんで実際売れる！
…なんて事は
やりたくても
普通はできないですよね。
そんなん狙ってできるなら
みんな売れっ子作家に
なっとるからね。
だからどっちにしても
やっぱり新海誠は凄いんですよ。
でも、もし、
その「メジャー狙い」が
事実だったとしたら
僕がこの映画に感じた
印象についても
しっくりいくんですよね。
あの、圧倒的なフックの多さ…
凄く悪い言い方をすると
『君の名は』も
そうだったんだけど
ちょっと「あざとく」
感じてしまうんだよ。
この映画………
東日本大震災についても
あそこまで明確に描くのならば
もっと真正面から
大々的なメインテーマとして
扱ってほしかった…
…いや、トータルでは
メチャクチャ面白いのよ！
面白いんだけど………
「まんまと面白がらされてる」
…って感じもしてしまいました。
エンターテインメントなんだから
それでいいんですけどね…
だけどもね、
歪でも良いし
訳分からんくても良いし
やりきれなくても良いし
ドン引きさせられても良いし
何だか変でも良いから……
監督自身の
「こだわり」とか「葛藤」とか
「好き」とか「怒り」とか…
そんなこんなが
もっと透けて見える
エンターテインメントの方が
僕は好きですね………
この映画にもそれは
あったのかもしれんけど
僕にはあんまり感じ取れなかった。
そこは残念でしたねえ。
（でも、それをやりすぎると
全然売れなくなるから…
難しいとこやけどね… ）
………ここまで
悪口多めに書いたけど
それでも点数は4.0点です。
やっぱり面白いからねこの映画！
良くできてるもん。凄い！
…そして
これは本当か嘘か知らんけど
『君の名は』の時に
「あと、1、2本は
サービスで作ります。」
…と新海誠が言ってた…
………とか何とか。
だったらもう。
それから2本ヒットさせたからね。
サービスは終了して
次回作からは本性を
剥き出しに
してくるのでしょうか？
新海誠！？
この3作で培った信頼をもとに
勝ち取った大予算をつぎ込んで
観客をドン引きさせるくらい
ド変態なマイナー作品を
出してきたら
それはそれで
メチャクチャ観たいし
映画監督として
メチャクチャ面白いですよね。
…とりあえず、過去作を
チェックしてみるか…
2023-9
