意外なほどに黒澤版に沿った内容であった。逆に言うと、黒澤版を知っているが故に、ストーリーに意外性が無く、先が見えてしまう点は、やむを得ないとは言え、若干残念。
オープニングのタイトルロールは、まさに５０年代のテクニカラー映画を彷彿させる字体や色味で、昔の映画を見ているよう。それに加えて、ロンドン郊外の様子やロンドン市内の建物が（ロケでしょうかね）クラシックスタイルで、その点非常に良かった。
主人公が惹かれる若い女性が黒澤版の小田切みきに何となく似ている。脇も黒澤映画のような癖のある人物が多く登場し、非常に丁寧に作られた映画。
人生とは何か、人は人生の終わりが見えた時に何をすればよいか、非常に考えさせられる映画。黒澤版は白黒だし音質も悪い。若い人にとってはハードルが高いだろう。その中で、この映画（しかも英語版）が２１世紀に作られるというのは非常に意義高いものであり、是非、オリジナルの黒澤版もみて、その構成・俳優の演技力を堪能して欲しいものだ。
