ククレ

生きる LIVINGのククレのレビュー・感想・評価

生きる LIVING(2022年製作の映画)
3.5
黒澤明監督の「生きる」は言わずもがなの名作。今更何をリメイクするんかな?と思いながらも、カズオ・イシグロの脚本でロンドンが舞台になると聞いて、とても期待してた。
うーん…これはこれで良かったけど、黒澤明には遠く及ばない。

クラシック映画みたいな演出に、英国紳士たちの抑制の効いたセリフや振る舞いが相まってなんとも言えない渋い作品になってるけど、黒澤版の方が熱量があったし、人間臭くて埃っぽい感じがリアルだった。

やっぱり黒澤版を観た上で観るべき映画だと思う。展開はほぼ同じだから。先にこの作品を観てから黒澤版を観ることになるのはもったいないわな。

何と言っても、ビル・ナイが年取り過ぎやで!「うだつの上がらない定年前の市民課の課長」というよりも「後期高齢者」にしか見えへん。「働き盛り」じゃないから、末期がんの絶望感が伝わらないんやな。黒澤版の志村喬には、情けない表情に悲しみが漂っていたし、仕事に目覚めたときの目力には生命力があった。

英国にはこんな昔からクレーンゲームがあったの?黒澤版では重要な小道具だった「うさぎのおもちゃ」をもっと活かしてほしかったな。仕事に覚醒するまでの経緯が説明不足に感じた。

だから、「ナナカマドの木」はいい歌だけど、「ゴンドラの唄」の哀愁にはかなわない。
あー、やっぱり黒澤版をもう一回観たくなったなぁ…。
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