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生きる LIVINGのramca999のネタバレレビュー・内容・結末

生きる LIVING(2022年製作の映画)
4.5

このレビューはネタバレを含みます

久々に映画館にて鑑賞。
予定なく思い立って映画館に行ってみても良い映画に出逢えるもので。

死に直面して、自分がそれまでも生きていると言えるのか、
人生の一瞬一瞬を輝けているかに悩み、現実逃避してしまう老人が最後に輝きを取り戻す話。

まず、登場から風格漂うウィリアムズ課長。
THE 英国紳士に見えるんだけど、後にハリスさんに語る小さい頃なりたいものが「紳士」だったというところからもわかるように、見た目だけ紳士だった。

ご婦人方の遊び場陳情を含めて、基本仕事は責任転嫁のたらい回しで、日々が過ぎていくダメ紳士っぷり。

冒頭の新人ウェイクリングさんたちの会話で、十分にめんどそうなミドルトンが言う「本当にきをつけるべきは課長だ」と。
そのシーンと見た目からひねくれおじいちゃんに思えたが、そこからの彼の人物描写のギャップで引き込まれる。

ハリスさんの的を得たネーミングセンスがこれまでの課長を一言で表現していて、中盤のまとめに。死んでるけど歩き回る「ゾンビ」。彼の現状にはぶっ刺さりすぎる一言だった。

時系列に変化をつけた編集含めて、見せる順番が秀逸だった。
丁寧に意味のある構成で、伝わりやすさとどんなメッセージを印象に残したいかを効果的に表現していた。
特にウィリアムズさんがあまりにも幸せそうで、声を掛けられなかったという警察官の観た最後の姿は彼が最後は人生の中を輝けた証であり、素晴らしいエンディングだった。

個人的には遊び場の件は悪い言い方だけど、とても小さな出来事だとウィリアムズさんがウェイクリングに遺した手紙で語っていた通り、いわゆる大きな事を成し遂げたわけではないのが良かった。
人生の輝きは結果や成果よりも、強い想いでどのようにやり抜いたかで決まるんだと教えてくれた気がする。

それと、ミドルトンたちが葬儀の帰りに誓ったことを早々に破棄して、「ゾンビ」になっていたのも脚本としては好きだった。
ウィリアムズさんはそれくらい難しいことをやり遂げたんだよなあってなった。

自分もサラリーマンなので、全力で走り続けることの難しさはわかる。
ウィリアムズさんも死期を知っていたからこそ「最期」に全力を出せたのかなと。
この綺麗事ではない終わり方は好きだった。

ただ、仕事にやる気が出ずに、なんとなく転職を考えているような人は一度観てみると感じることがありそうな作品でした。

ビル・ナイ最高でした!
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