yoshi44

TAR/ターのyoshi44のレビュー・感想・評価

TAR/ター(2022年製作の映画)
3.5
ケイト・ブランシェットが自身の最高を更新する圧巻の超絶演技。
その佇まいの美しさもさることながら、指の先、呼吸のタイミング、筋肉のひとつひとつ、顔の皺までも計算し尽くされているようなその技量に圧倒される。
ケイト姉様の演技はずっと見ていられる至福の時間だが、お話としては長い。
あと30分短く作れたと思う。
以下最後の方にネタバレあり。

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圧倒的な才能から派生した絶対的な名声と権力を持つ女性が、自身の振る舞いによってキャリアを崩壊させてゆく。
その振る舞いがリアルなのは、本人はほぼ無自覚で、何なら自分は正しく、周りを尊重しているとすら思っていること。
完全に論破したり、事前に本人の承諾を得て多数決に持ち込んだり、ともすると見ている我々も正しい手順を踏んでいるように思えてしまうところが恐ろしく感じた。
その背後には権力があり、矛先を向けられた当人にとっては地獄でしかない。
女性によるハラスメントという観点は、ある昨今の意味平等性の賜物なのだろうか。

ラストの顛末「ベトナムでのモンスターハンター」の件、おそらく製作陣は「落ちぶれた天才の末路」的な意味合いで描いたのだと思うけれど、ゲームガチ勢からしてみれば「あの天才指揮者がゲーム音楽を鳴らすなんて!」と好感度爆上がりなのだが。
ター自身も「作曲者の意図に思いを馳せる」というのことは、ゲームやりこんだのではなかろうか。
その姿勢も含めてターを嫌いになり切れなくて、ケイト姉様の陣地を超越した存在感にただただ圧倒されるだけ。
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