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オッペンハイマーのyoshi44のレビュー・感想・評価

オッペンハイマー(2023年製作の映画)
3.8
「アメリカ映画で原子爆弾を描く」

それがどれほどの意義を持ち、どれほどの影響を与えるかについて、世界は深く考えてきただろうか。
ブロックバスター映画のほとんどは、ちょっとしたマクガフィンとして原爆を登場させて、海でドカンとか、冷蔵庫の中にいたら無事でした、みたいな扱いをしてきた。
歴史上唯一の被爆国として、我々はその描かれ方をしっかりと判定する資格と義務があると思うし、世界はその声を聞くべきだ。

海でドカン、を『ダークナイト・ライジング』でやってのけたクリストファー・ノーラン監督だが、本作は比較的誠実に描いていると感じた。
その被害の悲惨さを、オッペンハイマーの見る幻影としてマイルドに描いたことに賛否両論はあるだろう。
そしておそらくこの作品を“アメリカを勝利に導いた英雄譚”として捉え、その非人道さがこれっぽっちも伝わっていないアメリカ人は少なからずいるのだろう。

その懸念はさておいて、本作はノーランにオスカーをもたらした集大成。
映像・音楽・演技、全てが非常に高いレベルで、難しいテーマを絶妙な娯楽大作に仕上げている。
時系列をシャッフルするのはもはやお家芸。
現代の匠、ホイテ・ヴァン・ホイテマによる映像美と、ルドウィグ・ゴランソンによる途切れることのない音楽のアンサンブルが素晴らしい。ここまでバックでほぼずっと音楽が鳴り続ける作品も珍しいのでは?

稀代のヒットメーカーともなれば、出演陣も豪華この上ない。
皆がこぞって出演を希望したのだろうと伺えるし、気合の入った演技を魅せる。
個人的にはデイン・デハーンが出ていてびっくりうれしい。

IMAXに執拗なこだわり持つノーラン監督なので、当然ながら1.43:1のIMAXレーザーで鑑賞したのだが、けっこう頻繁に(それこそワンカットごととか)画角が変わるのが意外と気になった。

ユダヤ人であるスピルバーグが『シンドラーのリスト』を作ったように、日本人が作り、世界に発信される映画が出来ることを願って。
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