素晴らしい出来栄えの、このうえなく切ない物語。
演技、台詞、そして“間”の取り方が絶妙で、誰もが共感でき得る手触りを持っている。
でもなんだか悔しいのは、このシチュエーションは日本人を主人公にしても作れたはず、ということ。
でも日本で撮ったら、英語も大して上手くない人気俳優を使いつつミニシアター上映、世界で評価されてから初めて“日本アカデミー賞（笑）”とか取る感じだろう。
日本と韓国の、映画に対するグローバル意識の違いを突きつけられたような気持ち。
優しい旦那さんは、『ファースト・カウ』でこれまた優しいドーナツ職人を演じたジョン・マガロ。
アメリカ的マッチョイズムのそのさらに先、繊細で優しい男は今の世を反映しているのかもしれない。
いつまでも引き摺る男と着々と次のステップに進む女。一向に前に進もうとしない男は、僕にはちっとも魅力的には見えなくて、そもそも初恋の人は既婚者なんだから会いに行くなよと思う。
ゲーム「龍が如く8」のトミーの選択のほうがよっぽどかっこいい。
ラストシーン、旦那さんの肩で泣いた彼女は明日にはもう完全にすっきりして、これからの日々を生きていくのだろう。
そして男はいつまでも思い出し、後悔して、途方に暮れる。
