ヤンデル

TAR/ターのヤンデルのネタバレレビュー・内容・結末

TAR/ター(2022年製作の映画)
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このレビューはネタバレを含みます

・ラストシーンでは、ターが「モンスターハンター」のオーケストライベントで指揮をしており、観客はコスプレ姿だが、ターの権威に関わりなく、若者たちは純粋に音楽に集中する様子が描かれている。ターはその前の実家に戻るシーンで、バーンステインが子供たちにクラシックの面白さを教えるテレビの録画を見ていた。

・トッド・フィールド監督は「モンスターハンター」のファンで、音楽も好きだと話している。また、この音楽がターにとって救いとなると考えたという。単純にゲーム音楽の指揮をするターが落ちぶれた、という話ではない。

・この映画はスタッフクレジットが冒頭にあり、本来最初にある主要キャストは最後に表示される。このことは時間の逆転や、この映画の伏線が前半にちりばめられていることを示している。

・スタッフクレジットの際にシピボ族の原始的な音楽が流れている。シピボ族はアマゾンの奥地の部族で、過去が未来に収束するという考え方を持っている。

・マーラーの5番は葬式のような曲調から始まり、最後に盛り上がる構成になっている。これも時間が逆転していること、ターが最後に再生することと繋がっている。

・冒頭でターの寝姿をスマホで中継しているのはフランチェスカ、メッセージのやりとりの相手はクリスタと考えられる。

・冒頭のインタビューシーンでフランチェスカがターの経歴を暗唱しているのは、対外的な経歴をWikipediaでコントロールしているため。ターは自分を演出し権威を作り出している。

・ターがインタビューで話す指揮者リュリ(指揮棒が足に刺さって菌によって死んだ)もゲイであり、この話はあとの展開の伏線になっている。バーンステインもゲイだった。

・ターがインタビューシーンでバーンステインから学んだとして2つの言葉を紹介する
カバラ…自分を殺して芸術に身を捧げる
テシバ…過去の罪を反省して贖う
これらも後に続く物語の伏線になっている。

・インタビュー中に後頭部が写る赤毛の女性はクリスタ。その後のシーンにも登場するが、そこにはいないはずの設定になっている。これは後に幽霊であることがわかるが、そこまで印象に残らないので、2回観ないとほとんどわからない構成になっている。

・ターが学院の講義でバッハを嫌う青年マックスを否定するシーンでは、芸術とその作者のキャラクターは無関係にすべきと言っている。同時に、芸術家は自分を殺して身を捧げるべきとしているが、これはターが自分自身のエゴによって崩壊することの伏線。

・この講義のシーンでは後のターが追及される場面でスマホの持ち込みが禁じられていたとされるが、良く見るとフランチェスカがスマホで撮影をしていることがわかる。

・ターがラジオを復唱するシーンは、ターが他の人を真似ることでステータスを作ってきたことを表している。ターは訛りが強いニューヨーク近くのスタッテン島の出身だった(実家で訛りのある言葉で自分は何者か?と問いかけられる)。アルバムのジャケットも過去のバーンステインのものを真似ている。

・フランチェスカとターがマーラーは妻を芸術家ではなく主婦にしてしまう議論をしているが、これはターが副指揮者をクビにしたあと、ずっと秘書のように使ってきたフランチェスカを採用しなかったことの伏線。

・ターは妻のシャロンの心臓病の薬を盗んでおり、シャロンが薬を探しているときに取り出す。シャロンが死んでも良かったように捉えられるシーン。

・ターがクリスタから送られた「CHALLENGE」という本はレズビアンが男装して女性を誘惑する内容の小説。迷路の模様はクリスタがシビポ族(迷路の模様を体に描く習慣がある)を思い出させるため。

・ターが老指揮者と話すシーンではショーペンハウアーは雑音やおしゃべりを嫌い、女性を突き落とすエピソードを話すが、これもターが後に雑音に悩まされる伏線になっている。

・ターが夜中に飛び起きるシーンではクリスタの幽霊が写っていたり、クリスタがカーテンの後ろに隠れているシーンがある。夜中にメトロノームを鳴らしたり、マーラーの5番の譜面を盗んだのも幽霊?

・モンスターハンターはモンスターを狩るゲーム…これは監督自身が、世間がモンスターであるターのキャリアを潰したこと、また、ターが自身の内面のモンスターのようなエゴを殺すことを表していると話している。

・マッサージパーラーのシーンでは「マーラーの5番」と同じNo.5の少女に見つめられてターが嘔吐する。これは自身が権威を使って女性を好きにしていたことは売春(金で女性を買う)に近い行為とみなしたと捉えられるシーン。
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