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ケイコ 目を澄ませてのスのレビュー・感想・評価

ケイコ 目を澄ませて(2022年製作の映画)
5.0
人工の川、荒川を、ケイコは日記で川が臭かったと綴る、トレーニングをサボればよかったと、
人工の川が臭いこと、ケイコの人間味と耳が聞こえないが故の研ぎ澄まされた五感が生んだ表現だと感じ、猛烈に感動した

手話に字幕をつける場面と付けない場面があるが、これは生まれつき耳が聞こえない先天的な手話と、会話を目的とした後天的な手話との属性の住み分けを表現し、観るものに奥行きを与える
字幕がない分、手話をまじまじと観ることになるが、映画ならではの普段観れないものを観るという体験は本質的なものだ

土手や高架下、ジャンクションの交わりで表情を変える荒川を所々に散りばめ、観るものの感情を整理しつつ静寂の中生きている同じ時間を共有させようとする

きみの鳥はうたえると似て非なるラストカット
きみの鳥は歌えるには2人の人物が存在するが、ケイコには対象となるものは川と高架しかない
そこにより強く存在するのは時間と経験の蓄積だ、えも言えぬ感情が身体を熱くする
「人間としての器量があるんですよ」この言葉の意味をもう一度考えさせられる

この映画に何を感じ言葉にするか、あえて言葉にしないべきか、軽い気持ちで表現できない、ただ三宅監督の言う悔しさの肯定は僕の中に新たに芽生えた価値観だった

冬は熱くなりすぎた身体を冷ますのにほんとうにちょうどいい季節だな、こういう映画は映画館で観るべきだし、じゃなきゃ自分の身体の熱さも冬の包み込まれる寒さも感じられないよ
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