JunichiOoya

ケイコ 目を澄ませてのJunichiOoyaのレビュー・感想・評価

ケイコ 目を澄ませて(2022年製作の映画)
4.0
音楽や効果音をひたすら排除していく演出に「歌」を持ち込む佐藤緋美さんが凄く得な役回りなんだけど、演出の思惑に応えきってすばらしい芝居だったと思う。

ギター抱えて表現模索しながら居候的に同居する姉の部屋で唯一無二といっても良いサポートぶり。岸井さんと佐藤さんのシーンはとても上質のホームドラマになったおりました。

そもそも佐藤さんのことまるで知らなかったのだけれど、あのご両親のお子さんですか! リトルゾンビーズもハンドボールもムーンライトも彼なのね! 『少女は卒業しない』『あつい胸さわぎ』とても楽しみです。

岸井さんは芝居が上手だし、目の力も尋常じゃないので、この役には打ってつけなのですが、何よりあの「小柄」さが良いのではなかったかしら?
いかにウエイト制とはいえ、あの身長、あのリーチでボクシング、というのは…。
冒頭の顔面ボコボコを含め、勝敗結果を問わず、見ていてどの試合もまるで勝てる気がしないのがあの迫力、リアリティを生んでいたと思います。

実は拳闘映画には相性が良くなくて、多分それは必ず登場する、わけ知り顔、酸いも甘いも噛み分け顔のトレーナーのせいじゃないかと思ってまして。

その点、この映画の三浦、仙道夫婦は良かったです。三浦さんのベッド脇で日記を朗読する仙道さんの声に、ほろっとなりました。あの日記、岸井さんの「声」なんですが、彼女には「文字」はあっても「声」は無いのですよね。
JunichiOoya

JunichiOoya