けーな

君を想い、バスに乗るのけーなのレビュー・感想・評価

君を想い、バスに乗る(2021年製作の映画)
4.3
静かに心に沁みてくるものがあり、とても感動した。

最愛の妻が亡くなって、その妻との約束を果たすため、バスで、イギリス横断の旅に出たお爺さんのロードムービー。

若い人が、この映画を観て、どう思うのか、分からないけど、私みたいに、ある程度、年齢行ってると、自分の老後のことまで思い描いたり、また、主人公のトムが、足元おぼつかなく歩く姿から、亡き父のことなど、思い出し、映画内の小さな描写にも、心が震えた。 若い人が、今観て、よく理解できなかったとしても、年月を経てから、また観て欲しいと思う。

主演のティモシー・スポールの演技が、とにかく素晴らしかった。90歳のお爺さんの役なので、派手さは、全くないのだけれど、細かな動きや、表情など、実に見事だったと思う。

この映画で、ティモシー・スポール演じるトムの妻を演じているのは、フィリス・ローガン。この2人が、同じく夫婦を演じた「秘密と嘘」が、とても心に訴えかけてきた映画で、ティモシーの名演技が光っていたのだけれど、なんだか、この映画は、「秘密と嘘」の、あの夫婦のその後のように思えてきて、余計に感動した。

この映画は、お爺さんの世界を描いているだけじゃなくて、今の時代ならではの演出があって、面白かった。トムと出会った人達が、SNSで、トムのことを話題にするという展開がある。現実には、無断で勝手に投稿したらダメだろって話だけど、映画の演出だから、これも良かった。エンドロールで出てくる画像に注目。

ちなみに、トムが、縦断した旅は、スコットランドの最北端(ジョンオグローツ)からイングランドの最南端(ランズエンド)までの約1300キロを乗り合いバスだけで移動したというもの。

そして、折りしも、エリザベス女王2世が、スコットランドのバルモラル城で亡くなられ、そこから、一昨日、車列の行進によって、エジンバラへ6時間かけて運ばれた(280km)。そして、本日、エジンバラから空軍機で、ロンドンに運ばれるのだそう(640km)。 トムの旅と、女王のそれとを比較するのは、無茶なことだけど、トムの旅は、グレートブリテン島の西側の長い海岸線沿いを上から下まで行ったので、その距離は、相当な物だった上に、乗り合いバスだから、かなりの時間がかかったことだと思う。
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