ひこくろ

この子は邪悪のひこくろのレビュー・感想・評価

この子は邪悪(2022年製作の映画)
2.9
こんなことを言うのは申し訳ないのだけど、近年まれにみるレベルの胡散臭い映画だと思った。

とにかく精神病の扱い方が雑というかひどい。
これさえあればあらゆることを解決でき、しかもすべてを説明できる、まるで魔法のようなものとして精神病が使われる。
少しでも精神科にかかったことのある人、あるいは関わったことのある人にとっては、これは耐えられないレベルだろう。
まず大前提として「この映画の精神病はフィクション」だと受け入れないと、観ていられないと思った。

また、リアリティのない完全なフィクションとしてなら楽しめるか、というとそれもなかなか難しい。
映画が何を描きたいのかが、いまいち伝わってこないからだ。
ホラー映画にしたいのか、サイコサスペンスなのか、それとも狂気を描きたいのか、家族の愛を見せたいのか。
軸が定まらないので、映画はその場の雰囲気であちこちに飛んでしまう。

これは映画を彩る舞台設定にも如実に現れている。
どこか大林映画の雰囲気を思わせる統一した世界観がちゃんとあるのに、肝心の、この世界観で何を描きたいのかがよくわからない。
これを描きたいからこの世界観を持ってきた、というよりは、ただただ世界観を貫いてみたという印象なのだ。
だから、メイン舞台の病院を離れた場所では、いきなり現代的な感じになってしまったりもする。
描きたい主軸がないから、世界観が簡単に覆る。
これでは、ただ趣味でやってみました、というようにしか受け取れない。

映画は全体的にこんなちぐはぐな感じで、精神病の異様さだけが悪目立ちしている。
しまいには物語までもが破綻するのには笑ってしまった。このめちゃくちゃなラストはさすがにひどい。
玉木宏、南沙良、桜井ユキの好演がかろうじて救いだろうか。
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