ひこくろ

劇場版 響け!ユーフォニアム 届けたいメロディのひこくろのレビュー・感想・評価

4.5
「響け!ユーフォニアム」という作品の奥深さをあらためて見せつけられたような映画だった。

前作にあったスポ根感はやや鳴りを潜め、代わりに吹奏楽をめぐる高校生たちの物語という側面が強く打ち出される。
そこに「家族の呪い」というテーマが絡まり、それぞれの心理が前作以上に深く抉られていく。
今回の主人公は、飄々としていつも自信に満ち溢れているかのようなあすかと、どこか不安を抱え続ける久美子。
なかなか打ち解けないでいる正反対の二人が家族という共通の悩みを抱えながら、対峙していく様子がたまらない。
なかでも、二人が言い合いをするシーンの壮絶さは、熱く痛く、強烈に胸を打つ。

構成、演出もまた素晴らしい。
特に演奏シーンは圧巻。
大きな演奏シーンは三つあるのだが、そのすべてが一切のカットなしに、曲の最初から最後まで描かれるのだ。
これにより「吹奏楽」の物語であることがはっきりと意識されるし、なにより演奏が魅せる、聴かせる。
演奏そのものが物語の一部になっているのには、とんでもなく感動を覚えた。

テレビアニメの総集編であるはずなのに、それを微塵も感じさせない自然な流れもすごい。
演奏シーンもそうだが、あらゆる場面がダイジェストとは思えないほどの余韻と余白に満ち満ちていて、一本の映画として完成度が非常に高い。
テレビアニメを見ていなくても何も問題ないし、それどころか前作や前シリーズを見ていなくてすらも楽しめる。
続編であるにもかかわらず、この映画が独自の単体映画としての魅力をしっかりと備えている。
はっきりと、これだけ観るのでも十分にありだと思った。

吹奏楽と高校生を描いた青春音楽アニメとして、圧倒的な価値がある。
間違いなく、傑作だ。
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