ひこくろ

ペナルティループのひこくろのレビュー・感想・評価

ペナルティループ(2024年製作の映画)
4.0
妙なところに魅力を生み出した変なタイムループものだった。

説明不足な面が強く、導入部はかなり戸惑う。
とりあえず、なんとなく、恋人を殺された男が犯人の男を殺そうとしている、んじゃないかとわかってくる。
で、ついに相手を殺したところで、最初のタイムループが起こる。

元に戻った犯人は、当然ながら生きている。
男は繰り返す同じ日のなかで、ふたたび殺人を決行しようとするわけだ。
なるほど、これはどうにかして犯人を殺して終わりたいと願う男の話なのか。

と思ったところで、今度は不思議な要素が入ってくる。
犯人の男がどうも、自分が殺されたことを理解しているようなのだ。
だから、犯人は必死になって殺されない道を進もうとする。
男はそれを出し抜いてどうにか犯人を殺そうとする。
なるほど、これはループをしている二人の対決の物語なのか。

と思うがまた違う。
以降の詳しい内容はネタバレになってしまうので書かない。
が、とにかく二人は何度も何度も対峙し、殺しあうのだ。
そして、面白いのはそこに友情にも似た妙な関係性が生まれてくるところだ。

必ず殺さなければならない男と、殺されなければならない犯人。
それはもう強制のようなもので、二人は共同作業のようにそれをこなしていく。
当初あった憎しみや怖れ、怒りといったマイナス感情はいつの間にか消えてしまう。
同じ目的のために動く、ほとんど同志のような関係は、殺す・殺されるを越えて、もはや友情の側面すら見せてくる。
このコミカルな関係性と掛け合いがとにかく面白い。
この映画の肝は、ここにこそあったんだ、と強く思った。
最後の手を握って殺すシーンなんか最高だった。

一応、すべてに説明は付けられるし、オチもきちんと用意はされている。
でも、それらはふわっとしていてあまりいただけない。
ただ、そういうマイナス点を覆してしまうくらいに、男と犯人の関係はやっぱり魅力的だ。

この部分があるだけで、この映画のすべてが許せてしまう。
若葉竜也と伊勢谷友介、本当にありがとう。
この二人のやり取りを、ずっと観ていたいと思った
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