ポルノ映画を撮る為の撮影場所として訪れた家に住む老夫婦が、実は殺人鬼だったというスプラッター映画
評判の高い次作『パール』を観る為に今作を観てみましたが中々面白かったです
スプラッター映画の定石を守りながらも、タイ・ウェスト監督の演出や着眼点がオリジナリティを与えています
冒頭に事件現場の惨状を描き、そこから時間を巻き戻してコトの顛末を描き出していくやり方や古さを感じるトランジション、スプリット・スクリーン・ショットなどの演出が盛り込まれている
作中で登場するカメラマンの「低予算を誤魔化せるし、実験的な編集をしたい」という台詞をメタ的に効かせているのも面白い
また、軸となるテーマに"老い"という生物が逃れることのできない普遍的な恐怖を置き、共感できる悲哀を抱いた殺人鬼を作り出しているのも見事
老いた人間が強い性欲を持っている事への不快さを感じると同時に、もし自分が強い性欲を抱いたまま老いた場合を想像し恐怖してししまう
若い時にはしょうがないと当たり前のように受け入れられていた性欲が、歳を取ると呪いに姿を変えてしまうのは恐ろしい
往年のスプラッター映画では、「観客が喜ぶから取り敢えず裸映しとけ」と雑に消費されてきた性の部分にフォーカスを当てているのが良いですね
強烈な印象を残す老婆も面白いキャラクターとなっており、主人公と合わせて二役演じ切ったミア・ゴスには脱帽
『パール』も近いうちに観たいと思います