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きさらぎ駅のJUNのレビュー・感想・評価

きさらぎ駅(2022年製作の映画)
2.7
配信時Twitterでおもしろい!と話題になっていたような。元々2ちゃんホラーとして『きさらぎ駅』の話は好きだったので、それなら観てみようと鑑賞してみました。

感想としては、果たしてこれを面白い!と宣伝していいものなのか……人が求める「面白さ」とはなんなのかをよく考えてから宣伝したいものです。
はちゃめちゃにつまらないわけではなく、ラストの展開は案外好き。ネタバレになるので言えませんが、エンドロール後の演出といい、世にも奇妙な物語のような、後味の悪い、良いホラーの終わり方だったと思います。
ただいかんせん、ラストまでの全てに魅力が感じられなかった。
2ちゃんねるの元スレをベースにしているとわざわざ冒頭で言っているにも関わらず、本当にベースにしたのか?と聞きたくなるくらい違うものになっていたのが初めの違和感。

そして、設定を切り貼りしたようなキャラクターたちにも違和感が……本作では複数名のキャラクターがきさらぎ駅に降り立つわけですが、酒を飲み覇気のないサラリーマン風の男性、訳ありそうな若い男女3人組、正義感の強い女子高生……全員、特に魅力を感じるわけでもなく、異世界という特殊な状況に降り立ってしまった心理ってそんなものなのか??と疑問にならざるを得ない。
特に、本作の悪役的ポジションの不良風の彼(すみません名前忘れてしまいました…)が、あまりにも「そんなうわべだけの怒りでナイフ向ける人いる??」というくらい薄い。

が、しかし、一番残念でならなかったのは、状況描写の乏しさ。
少なくとも私がこの映画に期待していたのは「きさらぎ駅」という異世界の存在の奇妙さ、不気味さであり、よくわからないキャラクターたちのお粗末な逃亡劇ではないのである。
降り立ったきさらぎ駅は、どこにでもある風な不気味な駅で…というよりも本当にどこにでもあるただの田舎の駅だ。並んだ古民家も、ロケ地の問題なのか必要最低限なところしか映されず、不気味というより人通りが極端に少ない田舎町程度にしか感じられない。その町に「異様」という言葉はなく、「不気味」は住んでいない。

線路を「数時間」歩いた結果、聞こえ始めた祭囃子。……祭囃子?太鼓を叩いてる音だけでは祭囃子ではなく「太鼓の音」なのでは?そして、キャラクターたちは数時間線路を歩いても「隣の駅」につかないことをもっと不安に覚えるべきだし、もっと極限に疲れているべきではないのか…?
そしてこれは私の記憶違いだったら申し訳ないのですが、2ちゃんねるのスレではもともときさらぎ駅に着いた時は夜で、スレ主が写真に撮った駅名の看板は真っ暗だったはず…(2回目にきさらぎ駅行った人の方だったかもしれません…)明るい中線路を歩くという演出にあえてしたのは撮影の都合なのかな?とは思いますが、純粋にホラーを突き詰めるなら「数時間」あるいたら薄暗くなり、祭囃子が聞こえる方に提灯の光が見える、みたいなそういう演出もありだったんじゃないかなと……というか少し期待していた。
というのも、それには少し理由があって、この映画においては「考察」というものが全くしようがなく、しがいもないのが一番問題なんじゃないかと思い……普通2ちゃんねるホラーといえば無駄に知識だけはあるニートたちがその土地に纏わる禁忌や祭ごと、神話、都市伝説をベースに推理していって、最終的にその意味を理解しかけてさらに恐ろしくなる、みたいなのが定石じゃないですか。いわば推理を勝手にして勝手に怖くなるタイプの、ジャパニーズホラーです。
なので、「祭囃子」なんていう恰好の考察の的があり、神社という的があり、古民家や町、トンネルというヒントがありながらも、それを考察したいと思わせない、あまりにも雑な描写が多く、残念でなりません。
襲ってくるものが「血管みたいなもの」って……まぁそうなんですが…………………

……色々言ってしまいましたが、これらは全て私が「思っていたものと違かったから」言っているただ愚痴のようなものであり、この映画に何も期待していない人からしたら、「何をそんな。何も考えずチープなホラーを楽しめばいいじゃあないか」というような感じなのかもしれません。
ただ、きさらぎ駅という愛され続ける題材を使ったにも関わらず、「面白いものを作ろう」という気持ちが感じ取れない作品は、やはり残念なのです。
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