JUN

ザ・コールのJUNのネタバレレビュー・内容・結末

ザ・コール(2020年製作の映画)
3.8

このレビューはネタバレを含みます

事前情報一切なし、ただ面白いからと勧められて鑑賞。
正直、あらゆる意味で後悔した。

まず、めちゃくちゃ怖い。
本当に何も知らないで観たので(電話で過去と繋がるというのだけは知ってた)、素直に次の展開に怯えながら見る羽目に……。そう、脚本がサイコホラーとして秀逸すぎて、予想できないのだ。ある程度「こうなるかな?」と予想はできても、次の瞬間には裏切られる。し、予想できたとしてもそれが最悪の展開すぎて、また裏切ってくれると思いきや、それは逆にそのままだったり……。とにかく、怖い。
というか、これは完全に情報がなかった私がいけないかもしれないけれど、普通に「過去に殺害された女の子を未来からの電話で助ける映画」だと思っていたので、中盤以降のストーリーに頭が追いついていかなかった。こんな怖いなんて聞いてない…………
ラスト、エンドロール前の演出が1番いけない。
どうして幸せで終わらせてくれないの!?!?と怒りすら覚える。が、あのまま終わっていたらこの映画はここまで心に残ることはなかったかもしれない。そういう意味で、やはり脚本が秀逸なのだと思う。

そして、主演のチョン・ジョンソの狂気が迫真すぎて、それも怖い。演技が上手すぎて、むしろ彼女が幸せそうに笑う姿を全く想像できないし、オ・ヨンスクとして本当にこの世にいるのではないかと思ってしまう。序盤の「母に怯える弱く無邪気な女性」から、終盤の「狂気のサイコパス殺人鬼」になるあの瞬間が特に好き。いや、彼女はずっと「無邪気」ではあって、その無邪気さ故の狂気が恐ろしいのかもしれない。それを演じきれる彼女の演技力も恐ろしい。
恐ろしすぎて、鑑賞後すぐにチョン・ジョンソを検索して、普通にカメラに笑いかける彼女を見るという回避行動をとってしまった……しかし、それでも「もしかしたら人殺してるかもしれないな……」と思ってしまうので(失礼)、彼女をこの映画で知るべきではなかったかもしれない。そう後悔するくらい、本当に天才的な女優さんだと思う。

個人的に、どんなスプラッタホラーもエクソシスト系も普通のホラーも大丈夫な自信はあるのですが、今作は本当に心にきた。電話で繋がるタイムリープもの(?)という非現実的な設定でありながら、なんとなく全てがリアルで、本当のことのようで、恐ろしかったのだと思う。そして、前半の明るい感じからの落ち方が、何と言ったらいいのだろう。「えぇそうなるの!?」という驚き方というよりは「やめてぇええ!」となる感じの……主人公がどうもがいてもどんどん悪くなっていく事態と、とことん希望が潰されていくのが本当に心にくる。
お母さん……お母さんごめん蘇って娘を殺して……と途中何度祈ったことだろう……

基本的に過去と現在を行き来する構成で難解もののように思えるものの、構成が上手いおかげで、すんなりとストーリーに集中することができたし、登場人物が少ないおかげでその繋がりなどもわかりやすく、そういうことに頭を使わなくていいのがありがたかった。

総合的に、人怖い系ホラーを観るなら絶対におすすめしたい作品です。



【どうしてもこれだけは言いたい】

全体的に、本当に良い作品。
ラストの演出も、先述したように、私の心に深い傷を残すのに相応しいものだったと思う。
しかし……
ラストだけ「どういうこと?」となってしまうのが本当に惜しい……私と同じモヤモヤを抱えている人へ届くことを願い……

あの世界では、過去の変化による現在の変化はおそらく「未来からの作用で人の生死に関わる事象が変化した時」に起こるので間違いない。(それが起こった時点で現在が変わるので、変わった地点〜現在の間も決定している)
では、ラストのあのミスリードは一体どういうことになるのか?
ラスト起こったことをまとめると、
1 現在のヨンスクが過去のヨンスクに電話で話す

2 過去で母と警官が訪ねてくる
 現在のヨンスクの家でソヨンが電話を取る

3 過去のヨンスクが母と警官を襲う
 現在のヨンスクがソヨンを襲う

4 過去の母にソヨンが電話で応える

5 過去で母とヨンスクが転落
 現在のヨンスクが消え、母が生き残っている

6 過去のヨンスクが目を覚ます
 現在の母が消えソヨンをヨンスクが拉致

ここから察するに「一時的に母が生き残った世界線になり、その後ヨンスクが生き返る」という事象を起こすには……

A 「1」で電話で会話したことによってそういう未来が仮決定された

B 過去のヨンスクが転落した際に一時死んだので生き返るまでの間、未来が変わっていた

の二択になるかと……
しかし、そのどちらも腑に落ちない。
Aでは「電話を手放さないで」と現在のヨンスクが過去のヨンスクに言ったことがシーンとして伺えるが、そもそもその肝心の電話はソヨンの母が持っていた。そして、現在から電話はかけられないため「電話をしたから生き残った」は転落した時点では別に成立しない。加えて「電話をした時点で生き残る未来が決まっていた」のであれば、現在のヨンスクが「一時的に消える」ということはあり得ない。一時的に消えてしまうというのは「死ぬ未来が確定していて実現したものの、未来からの作用で生き残った」ということになるからだ。しかし、死んだ時点で、現在のヨンスクもこの世にいないためそもそも生き返るトリガーにはならない。
Bでは、そもそも「現在が決定するのは電話の有無に関わらず過去が変化したから」という前提だが、やはりこれも成立しないように思う。先述した通り、過去が変化した時点で、現在までのレールは敷かれ直すからだ。

そもそも、ソヨンを襲ったヨンスクは「母と警官がきたことを乗り越えて捕まらずに済んでるヨンスク」なので、ラストの世界線で変わったのは「ソヨンと話した母」の未来と考える方が自然なのだ。
その場合「電話で話したことで生き残った」が正解なので、やはりラストの演出のヨンスクが蘇った世界線にはならない。

結果、あの演出は過去からの電話にでた現在のヨンスクが「一旦本気で死んで生き返って」とか言わない限り成立しないのではないだろうか……?
エンドロール中も、このモヤモヤが消えることはなかった。

(ものすごく長々と書いてしまいましたが、誰か最後を説明してくださる方いらっしゃったら、コメントください……)
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