Tラモーン

AREAのTラモーンのレビュー・感想・評価

AREA(2021年製作の映画)
3.7
これもまた思いがけず夏作品。


引きこもりの昴(吉田樹)は香(河合優実)と自殺志願者の闇サイトで出会った。ともに心中する相手を探していた2人は、香の提案で彼女の故郷である岩手県の灯台を死に場所に選び、車で向かうこととなった。


"もう10年ですもんね"
"まだ10年じゃない"

昴と香とではそもそも死への覚悟や思いが比べものにならなかったんだろう。

伸び切った髪と爪、まともに会話もできず、久しぶりのアイスクリームには手を付けられず何故かフォークを握る昴。
一方で香は本当に自死を望んでいるのかと疑いたくなるほどお洒落な普通の女の子だ。

引きこもってきた数ヶ月、自死の念に囚われるようになった昴と比べ、香は外の世界と接しながら、より残酷な形で家族を失った世界への絶望を味わい、自ら命を断つことを決めたのだろう。

それが香には一目でわかったから、助手席には乗らなかったし、髪を切ってあげたんじゃないかな。

昴は自分でも気づかないうちに人生を見直す機会を与えられてしまった。

"戻りませんか?"

その違い。


夏の幻のような河合優実の少女性溢れる演技が素晴らしい。
Tラモーン

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