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ヒメアノ〜ルのTラモーンのレビュー・感想・評価

ヒメアノ〜ル(2016年製作の映画)
4.1
刺激のあるやつ観たいなと思い、前々からクリップしてたこちらを鑑賞。


清掃会社でアルバイトとして働く岡田(濱田岳)はダラダラと張り合いも無く過ごす日常に漠然とした不安を抱いていた。同僚の安藤(ムロツヨシ)が思いを寄せる女性ユカ(佐津川愛美)の働くカフェに連れて行かれた岡田は、そこで高校時代の同級生・森田(森田剛)と数年ぶりの再会を果たす。しかし、その後ユカから森田に付き纏われていることを明かされる。


めっっっちゃくちゃ面白かった!
この路線でも邦画やればできるやんけ!感動すら覚えた(何様だって話ですね笑)。

濱田岳とムロツヨシの明らかにコメディなやりとりで始まるオープニング。そして主人公とヒロインの甘酸っぱい恋愛ストーリー。そこにほんの少しの不穏な雰囲気でダラダラと進んでいくのだが、ストーリーもおおよそ30分以上進んだころ、まさに岡田とユカが結ばれた夜。愛し合う2人の部屋の外で不気味に佇む森田。
ここで突然のタイトルバックと恐怖感を煽るような劇伴!

ここで完全に持ってかれた〜!
この映画多分マジのサスペンスや…!と直感でわかる不穏な恐怖感。

岡田たちの幸せな日常と、それを徐々に侵食していく森田による恐怖。このバランスが絶妙過ぎる。ただのサイコパス殺人鬼モノに留まらないのはこのバランスによるものだ。

冴えない童貞岡田と小動物系なのに経験豊富なユカとの恋物語は可愛らしいし、明らかに漫画的な安藤のキャラクターは確実に面白い。
その一方でサイコキラー森田が重ねる理不尽な殺人はどれも非常に生々しく、不快で暴力的。
この対比が次第に距離感を縮めて描かれていく様がスリリングで堪らない。

そして断片的に語られる森田の半生。何故彼は殺人鬼と化してしまったのか。何故岡田に執着するのか。

圧倒的緊張感からの呆気なさすら感じるラストシーンからのエピローグ。とにかく切ない。1人の人間が壊れ、人生を誤ることの悲しさを感じるノスタルジーに心が震える。だから犬を避けたのか。

"俺もお前も人生終わってんだよ"

誰かが手を差し伸べていたら、森田の人生は終わっていなかったんだろうか。
ただのエンタメサスペンスに留まらず、人生に思いを巡らせる余地がまた素敵だ。


日常とは対極にある理不尽な暴力。アイドルであるV6の森田剛がこれを演じたことはとても大きな価値があると思う。虚ろな表情と圧倒的なバイオレンス。恐怖感。
凄い映画を観た。
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