Tラモーン

また春が来やがってのTラモーンのレビュー・感想・評価

また春が来やがって(2021年製作の映画)
3.8
夜中に目が覚めてしまった日に春の短編を。


大学5年目を迎える清田(五十嵐諒)とフリーターの山崎(奈良原大泰)は交通量調査のアルバイト仲間。遅刻を繰り返しては上司に叱られてばかりの2人のしょうもない春のひととき。


めちゃくちゃよかった。たった60分弱の中に2人のしょうもなくも愛おしい人生が詰まっていた。
俺はまだまだこんなもんじゃない!もっとビッグになる!みたいな熱い思いは無い。ただただ日々を燻って淡々と生きる若者2人。それでも人生に満足しているわけではない。

"逆転満塁ホームランじゃない?"
"ダブル役満じゃないですか?"
"がんばろうね"

春が来た!うまくいく!と期待した出会いは2人とも見事なまでに空振り。人生空振り続きの2人は諦めることにも慣れてしまった。

"君さ、なんのために生きてんの?"

目的が無い人生ってそんなにダメかな。この2人を見ていたらそれだけが幸せじゃないと思えてくる。

清田と山崎が家で酒を飲んで、夜中に買い出しに繰り出す。春は近く夜なのに外は暖かい。この空気感だけでこの作品の魅力が跳ね上がる。懐かしいな。

"春来んの早くない?"
"置いてくなよ"

"思ってた人生と違うじゃん"
"多分みんなそうなんじゃないすか?"

何は無くてもこんな楽しい夜があれば、それだけで人生って悪くないなと思えたことを思い出す。

満開の桜の下で二日酔いの2人が交通量調査をしているラストシーンが最高にダサくて愛おしい。



バリカンで坊主にしながら『タクシードライバー』の話をしたり、酔っ払って夜中に『アタック・オブ・ザ・キラー・トマト』を観ようとしたり映画小ネタが笑える反面、布団と空き缶はそうならねぇだろ!とか餃子の鍋に水を入れるタイミングがめちゃくちゃだったりと細かいところに粗さが見えたのがちと残念…笑。

でも学生映画はこのくらいの瑞々しさと荒々しさが素晴らしい。
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