Tラモーン

ニューオーダーのTラモーンのレビュー・感想・評価

ニューオーダー(2020年製作の映画)
3.8
前々から気になっていた一部で評価高めのディストピアスリラー。


新婦のマリアン(ナイアン・ゴンザレス・ノルビンド)は夫のダニエル(ディエゴ・ボネータ)と幸せな結婚披露宴を開いていた。父親が財政界に顔が広いこともあり、パーティに集まったのは富裕層ばかり。しかし外では経済格差への不満から暴徒化したデモ隊と軍隊が衝突し地獄絵図が繰り広げられていた。


"金持ちはクソだ!"

とにかく救いのない生々しく、リアリティのある現代社会で起こり得る地獄を描いた作品だった。
溜まりに溜まったフラストレーションはここまで人間を残酷にできるのだろうかと恐ろしくなる。

幸せなパーティにヌルッと違和感が侵入し、あっという間に恐怖に塗り替えられるシーンがリアルで怖い。

それと同時にこの作品が作られたメキシコでは実際に麻薬カルテルが軍や警察、政治と結びつき国の腐敗の原因となっていることを思うと、暴力の負の連鎖は現実に起こっているのだとまた恐ろしくなる。

赤と緑を多用した画面はまさにこの地獄が現代のメキシコで起こっていることを示唆しているのだろうか。

勇気を持って行動した人間が何ひとつ救われず、悪事はトカゲの尻尾だけを切り落として隠蔽され、腐敗した者たちが肥えてゆく。そんなラストシーンが淡々としつつ強烈。

過激なゴア描写はそこまで多くないものの、胸糞の悪くなるような不快さと恐怖を画面の外で表現するのがとても巧かった。

登場人物たちが過剰に喚き散らしたりせず、静かに恐怖に戦慄する姿がまた生々しい。

無音のエンドロールもよかった。


"死者だけが戦争の終わりを見た"
Tラモーン

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