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午前4時にパリの夜は明けるのsymaxのレビュー・感想・評価

3.7
"『夜の乗客』をお聴きの皆さん、今夜も朝4時までお供します…"

1981年、パリ…夫が家を出て行ってしまった…悲しみに打ちひしがれるエリザベート…それでも二人の子供を養っていかなければ…眠れる夜に心の支えとなっていたラジオの深夜番組"夜の乗客"…番組パーソナリティのヴァンダとの面接の後、番組スタッフとして働く事となったエリザベート…番組をきっかけとして、一人の少女タルラと出会う…

シャルロット・ゲンズブールの哀しげな笑顔が印象深い…

離婚したエリザベートが自立していく様と同時にその息子、そしてラジオ番組が結んだ一人の少女との絆をゆったりとしたテンポで、ゆったりと魅せてくれるのです。

そこには家族とは言え、一人の個を尊重するフランスらしい関係性が見え隠れしていて、くっつき過ぎず、かとと言って離れ過ぎず…絶妙な距離感がそこにあるような気がしてなりません。

話の展開は、時間軸を"現在"としても良かったのではないかとも思えますが、人と人を繋ぐ媒体としてラジオが重要なファクターになっているような感じを受けまして、今のスピード感ではこの物語の良さが上手く表現出来ないのでしょう。

何も無い日常が淡々と描かれているようでいて、少しずつ家族が成長する姿がそこにあり、でもハッキリとオチがある訳ではなく"何となく"これからも人生は続いていく…

この"曖昧さ"が本作の良さであるような気がします。

そんな中、一番ドキッとしたのは、ヴァンダを演じたエマニュエル・べアール…"天使とデート"のイメージが私的には強いのですが…この世のモノとは思えぬ美しさ…今作での貫禄にはビックリです…タバコの煙を斜めに吐き出す姿の迫力が…
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