たく

コール・ジェーン ー女性たちの秘密の電話ーのたくのレビュー・感想・評価

3.8
中絶が違法だった1960年代のアメリカで多くの女性を救った慈善集団を描いてて、男性中心社会において弱い立場が当たり前とされてた女性の肩身の狭さがひしひし伝わってきた。本作は2022年に公開されて、昔はこんなに大変だったという過去の話になってるんだけど、その直後の2022年6月にアメリカ最高裁が人工中絶権の合憲性を認めないという司法判断を示したことで、まさに今も続くリアルタイムの作品になってたのが何とも皮肉。監督のフィリス・ナジーは「キャロル」の脚本を書いた人なんだね。1960年代の中絶が違法だった時代に苦しむ女性を描く作品は、国は違うけど「あのこと」があったね。

1968年のシカゴで、弁護士の夫を持ち中流の暮らしを送る妊婦のジョーが、妊娠初期段階で出産が自身の命の危険を及ぼすという診断結果を告げられる。中絶が違法とされてた当時のアメリカで、例外規定である治療目的の中絶と、出産によって自殺の恐れがあることを適用申請するも拒否されるのが何とも理不尽。路頭に迷ったジョーが電話ボックスに貼られた女性向けの駆け込み寺的な広告を目にして思わず飛びつくのは、他に道がないと納得せざるを得ない展開だった。

ジョーが自ら中絶の施術を受けた事で、違法と知りつつも逃げ場のない女性の駆け込み寺となるこの違法な施設に家族に黙って協力していくところに、人生で初めて生き甲斐を感じてるのが伝わって来て、専業主婦としての抑圧された日常からの解放を示してた。この施設が行き場のない女性の救いの場であることを逆手に取り、唯一の医師である男性がボッタクリ報酬で搾取してるのが矛盾ありまくりで、ジョー自らが施術の技術を会得してボッタクリ医師を排除していくのが胸熱だった。

シガニー・ウィーバーが信念を持って慈善施設を運営する強いキャラでハマってた。ボッタクリ医師との駆け引きのゲームで、まさかの胸を晒すかというスリルを感じさせるのが年齢的に無理があったけど、彼女ならありうるかもと感じさせる現役感が流石だったね。
たく

たく