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PLAN 75のピポサルのレビュー・感想・評価

PLAN 75(2022年製作の映画)
4.4
なんだか説明的だし間伸びもしているなと最初は思ったけど、変な言い方だけど「映画を観ている」というフィルタを途中から外すとすべてが緻密に作られていると感じた。単身で暮らす高齢者が職だけでなく住居を探すのにも苦労すること。つながりがなくなると友達だったとしても一気に疎遠になること。話を聞くことが業務とされてしまうこと。火葬が追いついていないこと。フィクションではあるけど、描かれている一部は実際に起こっていることで。極端に人が少ない安楽死の施設は管理体制が杜撰であったり、コールセンターのオペレーターがみんなバイトの大学生みたいなのも高齢者が不要なモノとして扱われている印象を助長している。あの施設、気のせいかもしれないけどパッと見ゴミ焼却場みたいだったしな...
人の心、人の優しさが垣間見れるのが救いで、磯村勇斗が配給の味噌汁を差し出すところや河合優実が倍賞千恵子に寄り添っている姿が、派手ではないけれど強烈に涙腺を殴ってくる。
倍賞千恵子の真面目な人物描写もすごくて、特に施設に出発する当日の朝、がらんとした部屋での身支度は悲しさを越えた感情になってしまいスクリーンから目を逸らした。団地描写がリアルでもうね。きちんとリサーチしているんだろうなと思った。

こんな極端な、倫理観がぶっ飛んでいる政策が施行されるとは思えないし思いたくないけど、でも写っていることは現実と地続きなので観ていてとても辛かった。悲しすぎるのでもう観ないけど、ちゃんと映画館で観てよかったと思える作品。
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