海老シュウマイ

PLAN 75の海老シュウマイのレビュー・感想・評価

PLAN 75(2022年製作の映画)
2.0
これ死ぬ前日に嫌いだった奴殺しに行ったり、レイプしまくったり起きないんだろうか。今でさえ「◯◯を殺して自分も死のうと思った」なんてよく聞くけど。

少なくともその可能性を孕んだ制度なのは考えないといけないし、出てくる若者も老人たちも、そんなことしなそうな従順な人々で、こんな描き方って風刺が利いてるでしょ感、ディストピアを静謐な演出で描く私、しか伝わって来なかった。

監督インタビューをちらっと読んだ限りだと、結構な高齢者に取材したら「若い人たちに迷惑をかけたくない」と言ってたらしい。
そもそも、何才であれ何人であれ、若い人(他人)に迷惑をかけたいと思って生きてる人は多数派とは思えないし、少なくとも思っててもインタビューで答えるかは微妙で、そして、その特殊な取材を受けるパイプを持ってる老人って特殊なサンプルだろとしか。
日本会議の本部に行って憲法改正を聞いたり、辺野古のゲート前で安保について聞いてもしょうがない。ドキュメンタリーじゃないからそこは不問でいいけど。

そして、本当に描きたかったのは老人問題ではないとも言ってるから、その意味でも不問なんだけど、
この作品を観て、作り手の思いとは真逆で、「老人(生産性のない者)は不要なんだ」と真に受けた老人や若者に対してどう思うかは聞いてみたい。リテラシーのなさを受け手の責任にされても。

こんなんダサいよ、ダサいのは承知の上で、ラストに倍賞千恵子に「それでも生きる」という決断をさせるでもいいし、磯村勇斗や河合優実、ステファニー・アリアンに制度と戦わせる、暴れさせるでもいいじゃん。ダサいけどそのダサさに人間としての美しさがあると思ってしまうけども。

表現方法として余白があるのはいいとして、本当に伝えたいメッセージが伝わりにくく、誤って伝わる可能性にどこまで意識的だったか。
「老人は死んでも若者に迷惑かけるのな!」とも読めてしまう作りなのはどうなのか。

そして、本当に伝えたい人たちは誰だったのか、身の回りの狭い世界の人たちと、したり顔のシネフィルさん相手ではないことを願うばかり。