海老シュウマイ

市子の海老シュウマイのネタバレレビュー・内容・結末

市子(2023年製作の映画)
2.0

このレビューはネタバレを含みます

謎解きとしては冒頭から引き込まれ、興味の持続もあったのだけど、終わってみると嫌いな点が多すぎた。

結局、ミステリーとして、あるいはファム・ファタール(笑)な物語としてなら許せるけど、そんな単なるジャンルムービーを超えて、それ以上の社会問題、罪と罰、あるいは人間の本質、さらには「生と死」なんかを言い出してくるなら、こっちも言いたいことは山ほどあるけどな!

嫡出推定300日の件、言うほど関係ねーだろとか、「看護疲れ」なんてワンワードで処理できると思うなよ、とか。


個人的にはそこの問題よりも、主人公のキャラクター造形として、いわゆる「善と悪」を背負わせて、どう?重層的で複雑、高尚でしょ?人間描いてるでしょ感が鼻についた。
善とも悪とも決めつけてないこの語り口、こういうの好きっしょ?公平で理性的、知的に見えるでしょ?みたいな。価値観を押し付けたりしないよ、的な。

でも実際、ラストで主人公が死ぬか逮捕されるかしない以上、物語上、明らかに肯定されてるとしか読み取れないのだから、勝手に結論出てないフリ、悩んでるフリして悦に入るのはどうなんだい。


だし、ほんとに世の中や人間を多面的に見ることができるなら、ホントのホントで羅生門を言うならば、
本作でいえば月子の心情はもちろんのこと、前夫たるDV夫や渡辺大知の病理に想いを馳せるべきでしょ。
暴力や性暴力が再生産されるのはすでに言われてることで、彼らは加害者でもあるけど被害者だった可能性もあるわけだよね。

とすると、みんな大好き杉咲花と似た境遇に見えてきて、「考えさせられる存在」になっているにも関わらず、なぜ彼らは単なる「悪」として断罪されるんですかね。そして、いつのまにか単純な善悪の物語になってますが。

要するに、それは主人公を持ち上げるためだけに、作り手がそういう風に周りのキャラクターを作ってるからってだけですよね。別に高尚でもなんでもない。

そこには目をつむって無条件に楽しめるのがシネフィルの流儀なのだとしたら、そんな方々には大便を召し上がってはいかがかしら?にはなってしまうよ。