Taka

PLAN 75のTakaのレビュー・感想・評価

PLAN 75(2022年製作の映画)
3.8
2023年7作目

何よりも早川千絵さんの覚悟というか、強さを尊敬する。
 孤独死するひと、ひとりで安楽死に向かうひと、家族の補助を受けて生きるひと、家族と共に安楽死に向かうひと。そしてそこに関わる若者たち。それぞれの心理描写があまりにも解像度高く、リアルだった。
 公助精神や、これまでの社会基盤を築いてきた先人を尊重するべきとの主張も理解できる。でも、なんの生産性もない高齢者のために若者が苦しむことに疑問を感じる瞬間も少なからずある。こうした疑問や違和感から目を逸らし、怒ることを放棄して無感覚になる社会はいつか破綻する。そういう社会に対する警告としての意義を感じた。早川さん自身のプロパガンダの主張というよりは問題提起を目的とした映画なのでは?ヒロムが看板を掃除しているときにトマトを投げつけた人物の描写が全くないところとか、ラストシーンの曖昧さからの想像だけど。彼女の前作である「ナイアガラ」も観てみたい。
 安楽死という方法は確かに極端な例だけれど、義務教育の場で、どうあるべきか考える機会を与える教育を施さなくてはいけないんじゃないの?と感じる。年金制度だって、設立当時の日本国民の民意を反映した施策であって、決して今の日本国民の民意を反映したものじゃない。それを何の説明もなしに、教育もなしに公助精神とかお年寄りを重んじる心とか、そういう曖昧な集団心理で片付けようとするのはおかしいんじゃないの?と思う。こういう社会基盤そのものを疑問視すると、おかしいひととか、楽しいことだけ考えようよとか言われそうだけど、そういう社会に対して日和見的に寄生するような生き方に僕は憧れない。この中で実力で殴り込んで、結果を出した早川さんを尊敬する。
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