このレビューはネタバレを含みます
胸糞悪いけしからん映画としてはかなりよくできていると思う。あとは好み。金と時間を使ってこんな気持ちになりたいかという。ハネケやアリ・アスターが好きなら大丈夫でしょう。
主人公たちの態度がモヤモヤさせるが、これは日々場を繕ったり、懐柔させられたりする私たちそのものでもあるが故の同族嫌悪なので、うまい脚本だと思った。原題は「speak no evil」。人の悪口は言うな、という意味のことわざとのこと。招かれた先で不快に思ったことを責め立てる主人公たちが一見正しく見えるが、実は勝手な主張もはらんでいるし、ホスト側の夫婦の理屈にも筋が通っている。最後の最後に主人公に投げかけられる「お前が差し出した」という言葉も、勝手な価値観・思考がそれぞれで正当化されていくこの世界の縮図のようで妙な説得力があった。
ただ、凶行を重ねているにしては結構足つきまくりのザル犯罪だと思うし、土壇場での反撃のチャンスはいくらでもあろうにとも思って気が散ってしまったのも事実。
