ノラネコの呑んで観るシネマ

胸騒ぎのノラネコの呑んで観るシネマのレビュー・感想・評価

胸騒ぎ(2022年製作の映画)
4.3
デンマーク人の主人公一家が、イタリア旅行で意気投合したオランダ人家族の家に招待される。
だが、主人公一家は少しずつ違和感を抱き始める。
最初は些細なことと気にしないようにしているのだが、だんだんとこのオランダ人家族の異常性が露わになってくる。
とは言っても、決定的なことはクライマックスまで起こらない。
デンマーク人の夫は、オランダ人の夫に“男らしさの危機”を告白し、自ら彼の術中にハマってゆく。
原題は「Speak no evil」で、この邦題はどうなん?と思っていたのだが、実際に見るとなるほどと思わされる。
直感は生きる上で本当に大切なんだなあ。
所謂胸糞系ホラーの怪作と言えるが、ドツボに向かうのをこっちも期待してるので、主人公一家の愚か過ぎる行動も許せる。
だからこそ「あなたがさせてくれたから」という、ある人物のシニカルかつ否定できないセリフが生きる訳で。
目の前で起こっていることを不問にする“いい人”であることの愚かさと弱さを、風刺的に描き出した手腕はなかなか見事。
ハリウッドでリメイク進行中だそうだが、「ザ・バニシング」や「ファニーゲーム」に連なる欧州不条理劇の系譜を、ハリウッドがどう料理するのか楽しみ。