しげしげしげお

胸騒ぎのしげしげしげおのネタバレレビュー・内容・結末

胸騒ぎ(2022年製作の映画)
4.4

このレビューはネタバレを含みます

話題の映画、見てきました。

イタリアでの休暇中、デンマーク人夫婦のビャアンとルイーセ、娘のアウネスは、オランダ人夫婦のパトリックとカリン、その息子のアーベルと出会い、同世代の子どもを持つ者同士で意気投合する。
「お元気ですか?少し間があいてしまいましたが、我が家に遊びにきませんか?」
後日、パトリック夫婦からの招待状を受け取ったビャアンは、家族を連れて人里離れた彼らの家を訪れる。
オランダの田舎町。豊かな自然に囲まれたパトリックの家に到着し、再会を喜んだのも束の間、会話のなかで些細な誤解や違和感が生まれていき、それは段々と広がっていく。パトリックとカリンからの”おもてなし”に居心地の悪さと恐怖を覚えながらも、その好意をむげにできないビャアンとルイーセ。
善良な一家は、週末が終わるまでの辛抱だと自分たちに言い聞かせるが ——。(公式サイトから引用)

世間ではミヒャエル・ハネケ監督の「ファニーゲーム」を彷彿とさせるという所謂胸糞作品。
個人的胸糞に感じた所。

・「No」と言えない家族。
物語冒頭ルイーセが「私ベジタリアンで肉食べないの」と言ってるのに、家に行って早速「猪の肉振る舞うぜ!」と意気込むパトリック。
そんな誘いに断れないルイーセ。
パトリックお前、人の話聞いてた?

・居酒屋だかバーか何かでのお支払い事情。
子供を預けて大人だけの時間、酒や飯を食べつつ大人だけの楽しい時間を過ごす両家族。
支払いが思ってた以上に掛かってしまい、パトリックはビャアンに料金を割り勘で払わせようとするも、ビャアンがカードを出した瞬間に「出してもらうの悪いね!」と言わんばかりのパトリックのクソみたいな態度。
パトリックお前、車や家あるのに金ないんか??

・子供の踊りに茶々をつけるパトリック。
ビャアンとルイーセの娘のアウネスがパトリック夫妻の子供、アーベルが踊りを披露するも徹底的に踊りのパフォーマンスを披露させようと怒鳴ったり、マグカップを投げつけるパトリック。
パトリックお前、人の心ないんか???

そんな価値観の擦れ違いに限界を感じつつも、逃げられない(というか逃げない)家族だが、ビャアンは倉庫にてとんでもない写真を目の当たりにする。
パトリック夫妻の子供、アーベルは実子ではない。
アーベルは舌がなく、物語冒頭「言語障害」と説明してたが、それは真っ赤な嘘。
本当は今まで隙がありそうな家族を見つけては、大人を殺しては子供を奪う極悪非道人。
アーベルが舌がないのは、言葉を言えなくして周りに助けを求められないよう状況を作るだけ。
その秘密に気づいたビャアンだが、もう遅い。
逃げ出そうとしても、パトリック夫妻に勘づかれて追いかけられるビャアン一家。
そして、捕まった際には娘のアウネスは舌を切られ持ってかれる。
(この時、パトリック夫妻の子供のアーベルは処分済)
持ってかれた際にパトリックはビャアン一家に一言「お前が差し出したんだろ————」

そして、子供を失ったビャアン一家はパトリック夫妻に裸にされ、石を投げつけられ死亡する。
残ったアウネスはパトリック夫妻の子供として、代わりの子供が見つかるまで生きていく————。

本編では不快な音楽が鳴り響いて、不快。
北欧ホラーなので、「ミッドサマー」「LAMB/ラム」の様に景色や画が綺麗なので、不快だけど画が綺麗だから何か続きが気になっちゃう。
そして、有名な絵画をリスペクトした作品。
北欧系の絵画をモチーフとしていて、絵画に詳しい人だったら気になるカットがいくつか。
そして今回の最大のテーマ「不条理」。
ビャアンの「やだ!」と言えない気持ちも分かるけど、子供が最大の被害者。
パトリック夫妻は子供を何度も何度も入れ替える理由が作品の中では特に明かされず、「子供が出来ない身体で自分達が愛せる子供を巡り探し回ってるのかな」と思ってたら、パンフレットにとんでもない答えが載ってました。
"子供はパトリック夫妻にとってただのストレスの捌け口"
————これは胸騒ぎや胸糞ではなく、害悪。
吐き気を催す邪悪。
ネグレクトにも程があるよぉ!!!!!!!


この作品を通して「胸糞」と言えば簡単に済むけど、「No」と言えなかったり、ネグレクトの経験がある人に取っては刺さる映画だと思います。
僕も「No」と言えない日本人なので、共感したりもしました。

多分自分は「不条理」な作品を安全な場所から見てどこか他人事の様に安心しきって酒を飲んで楽しんでるドクズ野郎なんだと思いました。