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ザ・ホエールのnicoのレビュー・感想・評価

ザ・ホエール(2022年製作の映画)
2.7
色々と映画鑑賞していたものの最近はレビューできずにおり、その内に内容を忘れると言った始末。鑑賞ホヤホヤの今、久しぶりにレビューする。

話題となっていた「ザ・ホエール」上映時から気にはなっていたが、癖のある作品だと感想を持ったら監督がダーレン・アロノフスキーだったと知り納得。正直、私の評価は高くはない。この監督作品は何かと話題になり受賞するが、毎度奇を衒ったような展開に胸焼けする。今作の大きなテーマとして『肉体と魂』があるが、ラストシーンの死と共に魂は昇天する。このラストシーンの昇天と冒頭の自慰シーンは繋がっており伏線回収。自慰では肉体こそイクが、魂は昇天しない。あくまで娘との対峙で魂は昇天する。

舞台原作とのことで殆どが部屋の中での会話を中心にストーリーは進む。台詞量も非常に多い。お互いを罵るシーンも多く、見ていて疲れる人も多いのでは。

2つ目の大きなテーマとして「人を救う」がある。(キリスト教の『贖罪』然り)がしかしこれが本意とは悉く裏目に出る人間関係の皮肉さや面白さ。良かれと思った行動は吉と出ず、悪意を持った行動が吉と出たりする。この皮肉さよ。それ故に掻き乱される人間関係。ダーレン・アロノフスキーは人間関係の皮肉さを描くのが本当に好きだなと改めて感じる。「白鯨」を読んだことがないのだが、これを機に少し興味が出た。

ダーレン・アロノフスキーが恐らく伝えたいであろう人間関係の皮肉さ滑稽さ本質などの意図は分かるのだが、昨今にありがちなとにかく奇を衒えば良い、個性的、鬼才と思われたい風潮が透けて見えて(特にラストシーンなど)胸に響くものは何もなかった。過去作の『π』や『レクイエムフォードリーム』などは大好きだったのだが、大衆向けにシフトしてしまったか…?
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