nico

オアシスのnicoのレビュー・感想・評価

オアシス(2002年製作の映画)
4.0
視聴して時間が経つ為、ホットなレビューではないが、久しぶりに視聴後に一緒に見た者と語れる映画であった。

既に多くのレビューが語っているように、「演技力」がすべてと言っても過言ではない程に演技を観る映画であると感じた。特にムン・ソリの演技は演技と気付けなかった程に素晴らしかった。

過去に重度の脳性麻痺の方と接する機会が何度かあった私だが、画面の中の彼女は正にリアルそのものであった。

例えば、日本のドラマで障碍者を主演としたものは幾つもあるが、皆お世辞にも上手いとは言えない。ジャニーズなどが演じた障碍者の役など過剰過ぎて冒涜とすら感じた。逆に障碍の部分の演技が不足(具体的ではない)していると、それはそれでリアリティに欠ける。

健常者が重度の障碍者を演じるのは、役者であっても非常に難易度の高い事かと思う。

やり過ぎてもいない、しかし障碍者に忖度して障碍部分を不自然に誤魔化そうともしていない、この非常に絶妙過ぎる演技の素晴らしさ。彼女にピントが当たっていないシーン(背景の後ろに少し映るだけ)ですら、表情の機微や動きは繊細で鮮明で、画面越しの彼女にどんどん吸い込まれていく。

言うまでもなく、男優のソル・ギョングの演技(恐らく彼の役柄はADHD)も素晴らしかった。この2人がキャスティングされた奇跡よ。素晴らしい化学反応を起こしていた。

ストーリーは取り立てて真新しいものはない。そもそもラブストーリーは、映画やドラマのジャンルの中で最も難しいと、私個人は捉えている。ラブストーリーを描くには必ず何かしらの「障害」が必要になってくる。盛り立てる為に。遠距離、既婚者、戦争、身分違い…と必ず何かしらの障害(障壁)がストーリーを形成していく。

現にリアルでも「障害のある恋ほど燃える!」と言う(感じる)人は多い。

今作では2人を阻む何かしらの障壁ではなく「障碍」そのものであったという設定。

ピュアに愛する2人を阻むものが多ければ多いほど、視聴者ものめりこみ、応援したくなるというもの。

脚本自体にはそこまで目を見張る展開はなかったが、それを底上げする2人の演技。この映画を見て改めて、映画作品に於ける俳優陣らによる「演技力の重要性」を感じた。

日本の事務所忖度のジャニーズやら、演技の為に脱げもしない癖に一人前に女優気取りで主役を張ってる俳優らには本当に愕然とさせられる。

暴力映画ばかりがヒットしがちな韓国映画だが、今作で韓国の『本気』を見せられた気がした。「本気の演技」を。

演技がずば抜けて素晴らしければ、脚本が多少雑な部分があっても視聴者は作品に多いに魅せられると思う。私もその内の1人だ。

演技だけなら星5点。
作品としての総評は星4点。
nico

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