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ビリーバーズのfujisanのレビュー・感想・評価

ビリーバーズ(2022年製作の映画)
3.8
『山本直樹の世界観と城定秀夫監督のベストマッチ』

12月に観た映画の中ではかなり面白かったです。

ピンク映画出身の城定秀夫監督が森山塔のペンネームで成人向け漫画を描いていた山本直樹の漫画原作を映画化するとなればこうなるよね、というハードなエロ描写を、北村優衣さんが体当たりで演じていました。

城定秀夫監督は近作「セフレの品格」でも”世間のルールや規範と、個人の自由・幸せ”の曖昧なバランスを描いていましたが、本作も狂信的なカルト集団の中ではじめて居場所を見つけられた不器用な人たちを描いていました。

スケールは違いますが、思い出したのは「ミッドサマー」。いけにえや性的儀式を含め、狂信的な集団の中ではじめて自分の居場所を見つけられたフローレンス・ピューのイメージとダブります。

社会の中で居場所を見つけられない人でも、特定の集団の中では幸せな居場所を見つけられる。社会の中で狂信的な孤独に落ちたジョーカーと、社会と接点のない人里離れた集団の中でひっそりと狂信的な生活をしている団体。どっちが危険なんですかねって感じがしました。



とはいえ、これはほぼエロ映画。

山本直樹さんの最近の作品は(本作を含めて)見ていませんが、一時期、森山塔名義の漫画を含めて、よく見ていた時期があります。

今はどうか知りませんが、昔の作品はシュールでエロくてぶっ飛んだ世界観の作品ばかりで、たとえば学生カップルが学校の屋上でHしたかと思うと、その直後に満面の笑みを浮かべたまま女の子が飛び降りたりたりするような、見ている人を置いてけぼりにするシュールな世界観が好きでした。

なので、本作のカルト宗教集団のぶっ飛んだストーリーも全く驚かず、というか、あの山本直樹のシュールな空気感が見事に映画化されていて驚きましたが、考えてみると、どちらも独特の世界観の作家さんで、すごく相性がいいんでしょうね。

あまりに独特すぎて、強烈に好き嫌いが分かれる作品だとは思いますし、終盤のシーンは日本映画なりの低予算感が出てしまっていましたが、個人的には久しぶりの山本直樹ワールドを楽しめた作品でした。



本作には、最近では「正欲」で共演していた磯村勇斗さんと宇野祥平さんも出演。とくに磯村勇斗さんは長編映画デビュー作とは思えない素晴らしい演技でしたが、やはり本作は北村優衣さんが印象に残る映画。

「セフレの品格」でもそうでしたが、城定秀夫監督は女性の裸体を美しく撮る方で、本作でもエロいというよりも美しさが印象に残りました。”いかにR18にせずに撮るか”の天才らしく、本作もよくR15+で通したなと、別の意味でも感心しましたが・・😅




2023年 Mark!した映画:362本
うち、4以上を付けたのは41本 → プロフィールに書きました
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